トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > ぺこぱ”誰も傷つけないツッコミ”の本質とは

大人気ぺこぱ、”誰も傷つけないツッコミ”の本質を元芸人が分析! 『M1』優勝の鍵・シュウペイの覚せい

シュウペイが人気バラエティスタッフに見つかった

 この漫才を通して世の中に訴えかける二段構えこそが『ぺこぱ』が一発屋にならない理由のひとつ。そして2つ目は『シュウペイ』である。

 一発屋になりやすいコンビの特徴のひとつに、片方しか印象に残らないというのがある。

コンビに格差があり、片方が”じゃない方芸人”と呼ばれてしまうのだ。ちなみに僕がやっていたホーム・チームの場合、相方が沖縄出身でインパクトがあった為、僕は沖縄じゃない方と言われたこともあった。

『ぺこぱ』を初めて見る人にとって、派手なメイクと紫の衣装、さらにはあの話し方で松陰寺は印象が強く、明らかにシュウペイは”じゃない方芸人”にカテゴライズされてしまう。

 正直なところ、シュウペイが個性を発揮する努力をしない限り、『ぺこぱ』の人気は続かないだろうと思っていた。しかしいろんな番組に出演し、少しずつ慣れてきた2人を見ていると、シュウペイの底知れない才能を垣間見えてきたのだ。

 今年の2月に千鳥が司会の番組『相席食堂』(朝日放送)で放送された「街ブラー1グランプリ」という大阪の京橋で街ブラロケをし、優勝者を決めるという企画があった。

 カメラを見ると凄い勢いで絡んでくる関西の人たちに松陰寺は早々に心が折れたようで、次第に声量が小さくなり、いつもの”ノリ突っ込まないボケ”もできない状態になってしまった。これは明らかにマイナスプロモーションになりそうな気がしていたが、VTRの後半にシュウペイがひたすらボケている姿が映っていた。松陰寺のツッコミがあろうがなかろうがひたすらボケたのだ。正直、ひとつひとつのボケのクオリティは高くはない。しかし心が折れないというのは相当な武器であり才能である。シュウペイの周りの反応お構いなしにボケを連発する姿を見て大悟は「VTRが跳ねだした」と笑いながら称賛していた。

 芸人の才能に一番敏感なのはテレビスタッフだ。先物買いをしなければいけないので当然と言えば当然だ。しかも一流の番組のスタッフはより敏感に感じる。

 また今や長寿番組になった『ロンドンハーツ』(テレビ朝日)のスタッフもシュウペイの匂いを嗅ぎつけた。狩野英孝やパンサーなど数々の若手を見出した番組。そのスタッフともなれば、笑いへの嗅覚は半端ではない。

 今年の5月に放送された企画「ドッキリ&カミングアウト温泉」では、最初にメインでドッキリを仕掛けられたのは松陰寺だったが、巻き添えを食らうという形でシュウペイにもドッキリが仕掛けられた。

 元来ビビリという性質持っていた為、すべてのドッキリに対し、マンガのように大げさに驚き、転げまわるといった奇跡的なリアクションを連発し、松陰寺に「今日は圧倒的に(シュウペイに)勝てない」と言わせたほど爆笑をとった。

 さらには今年10月に放送されたロンハーのスペシャルでは松陰寺が50PAというキャラに扮し、狩野英孝の50TAのライバルとして登場したが、番組後半の隠し玉としてシュウペイ中心の企画もあった。膨らんでいく巨大風船と共に部屋に閉じ込められながら、リアクションをしながら作詞作曲をし、出来上がった歌をステージで披露した。番組後半のメイン企画というところに、シュウペイに対するスタッフの信頼感を感じ取れた。

 このように松陰寺が『ぺこぱ』の看板となって突破口を開き、その後ろでひっそりと着実に才能を発揮するシュウペイがいれば一発屋になることはない。

 この誰も傷つけない漫才を通して、誰も傷つけない生き方に気付く。

 日々の忙しさの中でつい自分中心に考えてしまいがちな現代の人々へ、本当に辛くなったり、イライラしたりした時は、『ぺこぱ』の漫才のように、一歩立ち止まり自分を見つめなおしてみよう。

 そうすればポジティブな『ぺこぱ』流ライフを送れるはずだ。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2020/11/21 12:00
123
ページ上部へ戻る

配給映画