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再び猛威をふるう新型コロナ……日本集中治療学会が“重傷者の治療中止”に注意発表の非常事態

再び猛威をふるう新型コロナ……日本集中治療学会が重傷者の治療中止に注意発表の非常事態の画像1
イメージ写真(GettyImagesより)

 新型コロナウイルスの感染が再拡大し、第3波を迎えているとの見方が強まっている。すでに、東京都などでは医療関係者から医療崩壊が目前に迫っているとの声が出ている。こうした中、日本集中治療学会が回復の見込みがない患者などの治療の中止・差し控える場合の注意点を示した提言を取りまとめたことで、議論を巻き起こしている。

 日本集中治療学会は11月15日、「新型コロナウイルス感染症流行に際しての医療資源配分の観点からの治療の差し控え・中止についての提言」をまとめた。

 人工心肺装置(ECMO)や人工呼吸器、集中治療室のベッドなど医療資源には限りがある。今回の提言は、新型コロナの感染再拡大の中で今後、重症患者が増加し医療資源が不足するという最悪の事態に備えたもの。

 提言では、「COVID-19の爆発的流行時においては、医療資源の制約に基づき、無益性も考慮してよりよい結果(健康状態の回復)が得られると期待される患者に優先的に資源を振り分けるという観点から,人工呼吸器などの生命維持装置を用いた治療の差し控え・中止が発生する状況も想定しなければならない」としている。

 その上で、治療の差し控え・中止を余儀なくされた医療機関・医療従事者は、判断の倫理的妥当性と透明性を保つ限りにおいて、社会的非難から保護される必要があるとして、回復の見込みが無い患者などの治療を中止したり差し控えたりする場合の、考え方や注意点を示した。

 具体的には、以下のような提言を行っている。

1.医療資源配分の観点からの治療の差し控え・中止の判断は個人によるのではなく、医療・ケアチームの議論を経て行われること。
2.医療資源配分の観点からの治療の差し控え・中止については、医学的適切性・妥当性、患者の意思またはその推定、公正性なども考慮の上で判断されること。
3. 医療資源配分の観点からの治療の差し控え・中止については、
①患者に判断能力がある場合には、患者の意思に基づいて医療を進めることを基本とし、その場合にも、医療方針について家族らの合意を得るように努めること。
②患者に判断能力がない場合,家族らの合意に基づく代諾に基づいて医療を進めること。
③患者に判断能力がなく、代諾者もいない場合には、1 .および2 .の過程を経て治療の差し控え・中止の可否を判断すること。
④患者や家族らの意思は常に変化する可能性があり、その変化にも対応すること。
4.治療の差し控え・中止の場合にも、緩和ケアを含めた適切な医療・看護が提供されること。
5.医療資源配分の観点からの治療の差し控え・中止について、方針決定の過程と医療行為の内容の要点を診療録などの診療関係記録に記載すること。また、それらは検証できるように記載すること。
6. 医療資源の配分による治療の差し控え・中止によって、精神的・身体的ストレスを生じる患者・家族ら、および医療従事者に適切なケアがなされること。
7.医療施設は状況に応じた適切な医療資源配分のために、必要な体制と手順を整えること。

 これに対してネット上などでは、「事実上の安楽死マニュアルではないか」「医療関係者が勝手に判断して治療を中止されたら、たまったものではない」など反発する声が多く聞かれる。

 新型コロナでの治療の差し控え・中止の問題は、新型コロナの感染拡大が始まった春先に医療崩壊寸前に至った時にも出た議論だ。それが半年を経過した現在、再び問題となっている。

 個々人が感染拡大予防を十分に行うことを大前提に、政府は重症患者のための医療体制を十分に整えるための一層の対策を行うことが重要だ。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2020/11/18 21:00
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