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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > “あざとさ”を肯定するテレビ

明石家さんま「裏なんか探したら大変やろ」 “あざとさ”をポジティブに肯定していくテレビの変化

中島健人「まず俺は、ジャニーさんから口説き落としました」

 裏があるのを前提に、表を面白がる。最近の「あざとい」という言葉の広がりにも、そんなところがあるのかもしれない。『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)を見ていると、そんなことを感じる。

 昨年から何度か不定期放送され、今年10月からレギュラー番組となった『あざとくて』。田中みな実と弘中綾香アナウンサー、そして山里亮太(南海キャンディーズ)をレギュラーMCとし、毎回ゲストを呼んで「あざとい」をテーマにトークが繰り広げられる。14日のゲストはSexy Zoneの中島健人。彼は語る。

「アイドルも表情管理ってめちゃめちゃ大切なんですよ。タリー(映像が使われていることを示すカメラのランプ)がついた瞬間に、いかにカメラを目で殺せるか」

 あるいは、中島いわく、そもそも「あざとく」ないとジャニーズではデビューできない。

「俺もジュニア時代は、あざといのエクストリームだった。じゃないとデビューできないです。ジャニーさんに少しでも見てもらいたくて。だからカバン忘れてみたりとか、振り付け忘れてみたりとか、メガネかけないでみたり」

 そんな「あざとい」言動で、ジャニー喜多川から「YOUどうしたの?」と声をかけられるのを待っていた。

「まず俺は、ジャニーさんから口説き落としました」

 同番組には毎回、合コンなどで「あざとい」言動を繰り広げる女性の再現VTRを見ながら、ワイプの出演者がコメントするコーナーもある。他の裏側暴露の番組でもよく見かける気がする。けれど、そこはこれまでプロの「あざとい」をテレビを通じて見せてきた田中みな実と弘中綾香。VTRの微細な部分にも気づきつつ、この言動にどういう意味があるのかを細かく解説していく。その分析は、「サバサバ女子ほど二面性がある」といったよくある定型的な語りをはみ出していく。

 かつ、そのコメントは総じて肯定的だ。女性が女性の裏を暴く系の従来の番組では、怒りが基調となっていたように思う。そこには「ヒステリックな女性」みたいなステレオタイプも重ねられているのだと思う。けれど、田中らはVTRの女性に「かわいい」と言ったり、「素晴らしい」と褒めたり、「あざとーい」と天を仰いだり。そこでの基調は喜びだ。「あざとい」は、多少ツッコミの余地も残した褒め言葉である。

 田中らのコメントには、「あざとさ」を技術とみなし肯定的に捉える視線もある。最近、芸人たちがテレビ番組での立ち居振る舞いに隠された技術などを語る“解説芸”をバラエティで見る機会が増えている。『あざとくて』で展開されているのは、そんな“解説芸”の女性アナウンサーや俳優、アイドルのバージョンという面があるように思う。

 また、「あざとい」はある種の暫定的な休戦協定のようなものかもしれない。私たちは、かわいい人や言動を見たとき、ついつい発信者側の裏の意図を感じとってしまう。発信者側に作為があってもなくても、「自分をよく見せようとしている」みたいな意図を過剰に読み込んでしまう。だから、ストレートに「かわいい」ということにしばしば躊躇してしまう。「あざとい」はそのとき、そんな作為の読み合いを一旦休戦し、「だがそれがいい」と肯定する言葉になっているのかもしれない。

 私も、見習っていこうと思う。たとえば、コロナ禍で『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)を中心に情報番組に引っ張りだこになった公衆衛生学者の岡田晴恵氏が、11日の『家事ヤロウ!』(テレビ朝日系)に出演し、私服の猫柄のセーターを着て料理が上手なところを見せていた。そして、「こっちのほうがたぶん普段の私なんじゃないかなって思います」と語っていた。これについても裏を読まないようにしようと思う。「あざとーい」と肯定していこうと思う。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2021/09/21 11:16
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