日本産BLドラマ『チェリまほ』がアジアで人気沸騰! 中国オタク文化とラブストーリーの現在地
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中国で巻き起こる空前のBLドラマブーム
──中国でもBLドラマがはやっていると聞きましたが、どんな作品が人気なんでしょうか?
だいたいが有料動画サイトの作品になります。2016年に人気を博したのは『上瘾』(ハイロイン)。男子高校生同士の恋愛物語ですが、とにかく主演2人の顔がめちゃくちゃ良いと評判でした。BLドラマブームの先駆けになった作品で、当時はBL小説を実写化することに対して驚きの声もあがっており、話題性も抜群でした。
2018年に話題になったのは『镇魂』(鎮魂)です。転生もの神話ファンタジーを原作にしており、これまた主演2人が美しかった! 実はこの作品は脚本などのレベルは低いと言われていたんですが、とにかく俳優たちの演技だけは評判が良く、最初はドラマ化にネガティブな感情を持つ原作ファンも主演2人の魅力に感化されたんです。
またBLがテーマになっていることから一時期検閲が入ったりSNS上で検索不可能になったことがあったんですが、これがかえってファンの対抗心に火をつけました。ファンたちは必死に宣伝活動を行って話題を作り、新規ファンを増やそうとする動きが盛んだったことも覚えています。
昨年放送された架空世界の古風ファンタジー『陈情令』(陳情令)も人気です。こちらは原作がすでに圧倒的な人気を誇る作品で、アニメ化、ドラマCD化などメディアミックスも盛んなので、最初からファンが多かったんです。そうした背景があるので、ドラマ化された際にも変に原作の設定を変更せず、主演の演技から、脚本・道具・服装・音楽などにもこだわり、原作ファンを裏切らない作りになっています。
BL小説のドラマ化がはやっていますが、主人公を女性に変更するなどの改悪も多く、原作ファンががっかりするパターンがほとんどなんです。ですが、今回あげた3作品は原作を壊さなかったので、評価も高い。いずれも日本国内から日本語で視聴可能なので、ぜひ見ていただきたいです。
──日本ではBL好きのことを「腐女子」「腐男子」というふうに、若干自虐的な呼び方をします。それはやっぱり、昔のBLマンガがセックスシーンありきのものが多く、言ってしまえば「エロ本」の要素が強かったことも原因なのかなとも思います。しかし、近年ではドラマ化される作品も出てきましたし、もちろんセクシャルマイノリティーを扱う作品ということでまだまだ課題は多いですが、必ずしも公言しづらい趣味というわけでもなくなってきたように感じます。中国ではこうしたBLを愛好することに対して、特にネット上ではどういう温度感なのか気になります。
オタク文化を含めBL、腐女子などのカルチャーは一種の「若者文化」として中国に紹介されているため、日本にも昔あった「おたく=変質者・犯罪者予備軍」、「やおい=隠れ趣味」みたいな先入観や、オタク特有の自虐感情はだいぶ薄くなり、オタクでも腐女子でも堂々と名乗れる環境ではあるのかなと感じます。
とはいえ、メディアなどで腐女子を取り上げる際は、「イケメン2人も揃えて目の保養だし、男同士仲いいの見て楽しいよね」というレベルの説明でとどまり、深堀はしていない印象。このあたりは日本も同じですよね(笑)。
また、この数年で中国でもオタク層の経済力が注目され、男性アイドルオタク(腐女子も大きな割合を占めている)が推しのためにとんでもないお金をかけていることから、経済効果重視で好意的に受け入れられることが多いんですね。
中国のネットといえば何かにつけて「検閲」がかかるイメージかもしれませんが、いくらネット上でBL的な妄想を垂れ流しても、友達と萌え語りをしても、それはあくまでも個人行為なので、制限がかかることは本当に少ないと思います。
ただ、BL妄想を「形」にする、つまり「創作」レベルになると次第に制限が出てくるし、受け入れられないという人も増えてくる。政府による検閲はもちろん、実在する人間を対象にするBL創作、いわゆる日本語で言う「ナマモノ」というジャンルに対して嫌悪感を持つ人が、一定数存在します。
──そのあたりの問題意識は日本とあまり変わらないんですね。中国のBL作品を取り巻く状況がつかめました。ありがとうございました。
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『チェリまほ』を制作しているテレビ東京はアジアでの反響を受けて、海外の配信会社で全話配信をしたいと意欲を見せている。現在はいわゆる“違法アップロード”という形で拡散されているため、公式に中国でのブームを取り上げることができないもどかしい状況にあるだろう。しかし今後、中国で正式な放送が可能になれば、さらなるブームを起こすことができるかもしれない。
<プロフィール>
はちこ
「現代中華オタク文化研究会」サークル主。小学生の頃、中国語吹き替え版の「キャプテン翼」で日本のアニメを知り、中学生の頃「ナルト」で同人の沼にドハマり。以来、字幕なしでアニメを見ることを目標に、日本語学科へ進学。アニメをより深く理解するには日本の文化や社会の実体験が不可欠だと考え、2011年来日。名古屋大学大学院修士課程を修了後、都内勤務。現在も継続的に中華オタク関係の同人誌を執筆している。
webサイト:http://hathiko8.blogspot.com
twitterアカウント:@hathiko8
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