自分を好きになれない貧困女子たちの下流ライフ 伊藤沙莉が主演のR15映画『タイトル、拒絶』
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「コロナ終息後は、かわいい女の子が風俗に来る」という主旨のコメントをラジオ番組で語ったお笑いタレントが猛バッシングを浴びた。女性が性的搾取に遭うことを喜ぶようなニュアンスが、女性層の怒りを買った。お笑いタレントが謝罪コメントを重ねた後もバッシングは続いたが、経済不況が多くの「貧困女子」を生み出し、風俗業界がその受け皿になっているという社会構造そのものは変わることなく存在する。伊藤沙莉主演映画『タイトル、拒絶』は、風俗の世界で生きているセックスワーカーたちにスポットライトを当てたものだ。Netflix配信ドラマとして爆発的な人気を呼んだ『全裸監督』(19)の脚本家チームが、監督・脚本・プロデュースを手掛けていることでも注目される。
無店舗型デリバリーヘルス「クレイジーバニー」に体験入店した女性・カノウ(伊藤沙莉)の視点から、この物語は進んでいく。カノウは平凡な家庭で育ち、高校・大学を卒業するという平凡な人生を歩んできた。決して高望みしたわけではないものの、就活は全滅。面接を受けては落ち、また受けては落ち……という繰り返しだった。カノウいわく「クソみたいな人生」から、抜け出すことができずにいた。
そんなカノウは気合一発、デリヘルに体験入店する。だが、いざラブホテルの一室で知らないオッサンと2人っきりになってしまうと、自分の恥部をさらけ出し、性サービスを行うことができない。やる気満々なオッサンを振り切って、ラブホから半裸姿のまま逃げ出してしまうカノウ。風俗デビューも失敗に終わってしまった。
さっさと店を辞めて立ち去ればいいのに、なぜかカノウは店に残り、キャストではなくスタッフとして働き始める。カノウはかなりの変わり者だ。デリヘル嬢になれなかった自分への罰なのか、それとも他の仕事を探すのが億劫なのか。おそらく、カノウがそのまま店に居残ったのは、風俗という世界が変わり者を許容する敷居の低い業種だからだろう。
店の待機部屋には、一見すると普通っぽいけれど、クセのある女性たちが次々と出入りしている。店でいちばんの売れっ子のマヒル(恒松祐里)は清楚なお嬢さま風に見えるが、おかしくもないのにいつも笑っている。メンヘラっぽい。熟女ニーズを受け持つシホ(片岡礼子)から睨まれると、思わずビビってしまう。待機部屋の隅っこにいるメガネ女子のチカ(行平あい佳)は、ノートに熱心に何かを書き綴っている。そんなキャストたちを相手に、カノウはこまごまと雑用を請け負う。
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