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日刊サイゾー トップ  > 【Netflix】『ベスト・キッド』の30年後を描いた『コブラ会』
産業医と映画Pの配信作品批評「ネフリんはほりん」#2(前編)

『ドラゴンボール』は『ベスト・キッド』をパクった?あれから30年後を描いた『コブラ会』が大ヒット!

『コブラ会』と橋田寿賀子作品の共通点

――ドラマ序盤はそんなダメ人間のジョニーが『コブラ会』再興のために、弟子のミゲルと共に必死で努力しています。

伊丹 アンダードッグ(かませ犬)が自らの人生を再起させるストーリーは『ロッキー』の系譜なわけだけど、そもそも『ロッキー』も『ベスト・キッド』も監督は(ジョン・G・)アヴィルドセンで、音楽はビル・コンティという名コンビ。アヴィルドセンはすでに故人だけど、『コブラ会』はオリジナルへのリスペクトが大いに感じられる作品になってるね。作中にある、音楽に乗せてトレーニングシーンなどを重ねていって、強くなったり状況が好転していく演出は、実にロッキー的だった。

大室 ただ、ドラマだからできることとして、ジョニーが改心していく様子が実に丁寧に描かれてたこと。

伊丹 というと?

大室 ジョニーの再起を時間をかけて描いてる。この作品では、改心しうまくいってるかと思ったらトラブルが起こって台無し、ってパターンを繰り返すけど、これがすごくリアル。実際プライドが高い人間はそう簡単に改心しないんだよ。麻薬中毒者が薬物をやめても、友人の誘惑や家族との喧嘩など何かをきっかけに再び手を出すことをスリップと呼ぶけれど、数度のスリップを経ながらもいろんな人に支えられて、最終的には薬物を断っていく。人は一気にではなく少しずつ変わる。こういうリアリティは2時間の映画サイズじゃできないんだよ。何かをきっかけに一気に改心しちゃうから。

――配信ドラマだからその過程をちゃんと描けると。

大室 それに、Netflix作品だと『梨泰院(イテウォン)クラス』(20年)もそうだけど、時間をかけて見せられるから成長、ビジネス、恋愛といろんな要素が介在できて複合的な内容になりやすい。それが配信ドラマの大きなメリットで、『コブラ会』にもその良さが存分に生きている。

伊丹 単純に過去作での強者と弱者の立場が逆転してるだけじゃなくて、ダニエルも成功しているように見えて、娘は遊びたい年頃、息子はゲームばかりと、一応家族の問題を抱えている。落ちぶれたジョニーと完全なコントラストになっていないところがうまいと感じた。

大室 娘はガチでグレてるんじゃなくて、思春期だったらそれくらいあるよねって程度のハメの外し方がいい“あるある”になってる。これもさっきの話で、映画サイズだったらグレるにしてもケンカや犯罪みたいなもっとわかりやすい描写になる。こういったいいあんばいのあるあるが続いてるから、物語が転がっていって無限にストーリーを展開できる。向田邦子や橋田寿賀子の脚本みたいに(笑)。

伊丹 あー橋田寿賀子的なうまさはある! 橋田寿賀子のすごさって一言で言えて、全キャラクターの行動にそれぞれの言い分が強くあって、良かれと思ってした行動が全部裏目に出るという人生の皮肉をリアルに描くところ。そしてそれで全部ドラマが構成されている。『コブラ会』にもそれに通ずる面白みがあるね。

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1978年生まれ。現在、産業医として日系大手企業、外資系企業、ベンチャー企業、独立行政法人など約30社を担当。

Twitter:@masashiomuro

おおむろまさし

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1979年生まれ。インディペンデント映画の制作に携わり、現在はフリーランスでテレビドラマ、映画、舞台などのプロデュースをしている。

いたみたん

最終更新:2023/02/08 20:05
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