押井守原案の映画『ビューティフルドリーマー』 主演の小川紗良が語る「メタ作品」の撮影舞台裏
#映画 #小川紗良
青春劇が若手俳優の即興芝居でよりリアルに
また、本広監督は新たな試みとして、本作で完全に完成された脚本を用いず、おおよその筋だけを立て、現場での口頭の打ち合わせで芝居をまとめていく“口立て”による演出を採用。若い俳優たちの新鮮な演技による、リアルな青春を映像に収めることに挑戦した。
「脚本は全体の大きな骨組みだけで、各シーンの細部はエチュード(即興劇)で一緒に作り上げていきました。あまり即興芝居の経験もなかったので、特に最初の稽古期間は大変でしたね。でも、映研メンバーのチームワークができて、それぞれのテンポ感や性格もわかってくると自然と息が合っていきました。そこは本広さんのキャスティングのバランス感覚も大きいと思います」
カメラ担当でサラを支えるカミオに『HiGH&LOW THE WORST』『私がもててどうすんだ』などの神尾楓珠、プロデューサーのリコに『あさひなぐ』『ドロステのはてに僕ら』で好演した藤谷理子など、本作には日本映画界期待の若手俳優たちが映画研究会メンバーとして出演している。
「助監督役の森田(甘路)さんやメイク役のヒロシエリちゃんは演劇畑の出身でエチュード力が特に高くて、すごく助けられました。2人とも口が達者なので、笑いこらえるのに必死で(笑)。映研部員たちの映画づくりをしている姿が純粋に楽しい映画ですが、役者から真剣味や説得力が伝わらないと笑えるものにならないので、そこの本気さは常にみんな意識していたと思います」
■撮影で早大の映画サークル時代を追体験?
演劇的な要素がちりばめられた甘酸っぱい青春群像劇としてストレートに楽しめる本作だが、同時に虚構と現実の境界線を曖昧化するようなメタ作品としての魅力も色濃くたたえている。
「映画って役者同士の普段の関係性が映り込みやすいメディアだと思っていて、特に今回の役はお互いの距離感が近くないと、部室など狭い環境でのエチュードは成功しないなと思いました。なので、稽古後はみんなでごはん食べながらこの映画について話したり、撮影の現場にトランプを持って行って撮影の合間にずっと大富豪したり……。実際に私も大学の映画サークルに所属していた時は夜通しで大富豪とかやっていたので、当時をそのままなぞっているような不思議な感覚でしたね。この映画の撮影自体、とても追体験的で。大学構内の現場で同じメンバーと会う毎日を繰り返していたので、その意味でもメタ的でした」
劇中劇を製作する入れ子構造、演出スタイルやキャスティングは、原案の終わりなき“祭”といった主題を伝える上で大きな効果を発揮したようだ。
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