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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『麒麟がくる』細川ガラシャ美人説の真相

『麒麟がくる』細川ガラシャがついに登場!“美人説”は真実か捏造か……史実で追う謎多き素顔

大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)が、ますます盛り上がりを見せている。ドラマをより深く楽しむため、歴史エッセイストの堀江宏樹氏が劇中では描ききれない歴史の裏側を紐解く──。前回はコチラ

『麒麟がくる』細川ガラシャがついに登場!美人説は真実か捏造か……史実で追う謎多き素顔の画像1
戦国時代を舞台にしたアクションゲーム『戦国無双』シリーズに登場する細川ガラシャをモチーフとしたキャラクター(コーエーテクモChannel 「『戦国無双4』 ガラシャ」より)

 現在放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』で、芦田愛菜さんが演じることが発表された「細川ガラシャ」。ドラマでは次女のようですが、一般的には明智光秀の三女として生まれ、のちの本能寺の変により過酷な試練を背負わされる歴史上の重要人物です。そしてまた、ドラマ、映画、そしてゲームといった歴史創作物の中では“絶対的な美女”として描かれることの多い女性ですね。

 しかし彼女の同時代人たちは、老若男女問わずガラシャのことを美女だとはひとことも証言していません。西洋人宣教師たちも同じ。ガラシャの「侍女頭」だったルイザという女性は、美しい容貌の持ち主とされるのに、ガラシャは並外れた知性だけを褒められる存在……これってホントはガラシャが不美人だったから?

 というところまで前回はお話しました。

 これまでの大河ドラマで描かれてきた「悲劇の美女」としてのガラシャ像は間違いだったのでしょうか? 「いいえ、そうではない」というのが筆者の見解です。

 今回はこのテーマを検証していきましょう。

 細川ガラシャこと明智玉(あけち・たま)について、彼女の容貌を美しいと評した史料はたしかに存在していません。しかし、同時に彼女の容貌について触れた文書も存在しないのです。とくにコメントが必要ない、月並みな容姿だったからでしょうか? それは違うと思われます。

 細川ガラシャは名門大名・細川忠興の正室です。そして当時、身分の高い女性は外出時に自分の顔を隠しました。「袿(うちき)」という装束を頭から被って、顔と身体の大半を隠してしまう「被衣(かつぎ)」。もしくは頭には「市女笠(いちめがさ)」と呼ばれる大きなサイズの笠をかぶり、その笠からは「虫垂(むしたれ)」と呼ばれるヴェールのような布を垂らし、顔から上半身をすっぽりと覆ってしまう場合もありました。

 俗にいう「つぼ装束(=壺装束)」です。身分の高い女性の姿を、ぶしつけな人々の視線から守るためにまとわれていた、外出着ですね。

『麒麟がくる』細川ガラシャがついに登場!美人説は真実か捏造か……史実で追う謎多き素顔の画像2
つぼ装束のイメージ図(イラストACより)

 大坂にある細川家の屋敷で暮らしていた頃、ガラシャは厳しい監視の目をかいくぐり、複数の侍女たちと同じ格好をして、教会に向かったそうです。どんな服装をしていたかの記録まではありませんが、彼女たちが「つぼ装束」だったことは、ほぼ間違いないと思われます。

 ちなみにガラシャがキリスト教の教会に行ったのは、彼女の生涯の中でたった一度、この機会だけ。初めて会う相手がいくら宣教師であったところで、ガラシャたちが、その顔を直接に見せる機会はなかったと思われます。

 つまり「大河ドラマ」でもしばしば描かれるような、教会に侍女を引き連れて素顔で現れるガラシャなどは、史実の観点でいえば「ありえない」のですね。とすると、細かいところまで様々な記録を残しがちなイエズス会関係者の誰ひとり、ガラシャについて美女どころかなんの容貌についてのコメントもしていない理由は、彼らが誰一人として「ガラシャの顔を見られなかった」、「ガラシャの顔を知らなかった」からではないかと推察できるのです。

 それではなぜ、オルガンティーノ神父が、ガラシャの「侍女頭」ルイザの顔だけは「美女」だったと言うのか推測すると、それは司祭である彼が、ルイザの洗礼の儀式に加わったからでしょうね。

 洗礼時ですら、つぼ装束で顔を隠したままでいることはさすがにできませんからね。このようにして、ガラシャは自分の侍女たちに先に洗礼を受けさせていきます。

 一度しか教会を訪問できず、その後も夫・細川忠興から厳しく行動の自由を制限されていたガラシャが洗礼を受けられたのは、オルガンティーノから指導を受けた、ガラシャの一番の側近といえる侍女マリアが洗礼の儀式を代行してくれたからです。

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