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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 常識を覆した石橋貴明“ほぼテレビ”動画の異常性
放送作家が人気動画を分析「YouTubeには手を出すな」5

「テレビノリはYouTubeで通用しない」そんな常識を覆した石橋貴明の“ほぼテレビ”動画の異常性

動画的常識はずれの連発!

 また、ことあるごとにタカさんは自身のチャンネルや動画のことを「番組」と呼びます。これも感覚が古い。細かい違いですが、YouTuberは自分のチャンネルを絶対に「番組」とは言いません。タカさんはテレビもYouTubeも同じように捉えているのかもしれません。

なんだか否定的な形で書いてしまいましたが、そんなつもりはありません。むしろ、こてこてのテレビ感覚でありながら、YouTubeでとてつもない結果が出ていることが、革新的なのです。

 これまでの動画を分析すると、『貴ちゃんねるず』の常識破りな一面が見えてきます。

 まずは一番再生された動画を見てみましょう。7月23日に公開された『【清原和博3日連続スペシャル】第1夜 ~清原、全部話すってよ~』で655万再生。動画の内容は『みなさんのおかげでした』の人気企画『男気じゃんけん』です。まんまテレビの企画をトレースしています。

 他にも、『貴ちゃんねるず』ではテレビの企画をいくつもやっています。飲食店を巡っていく『東京アラートラン』シリーズは、かつての『きたなシュラン』の派生系。演出・マッコイ斉藤さんとの音楽プロジェクト『Ku-Wa de MOMPE』シリーズは、かつて番組スタッフをアーティストに昇華し、音楽界に旋風を巻き起こした『野猿』の焼き直しです。

 やってることは完全にテレビです。
「テレビノリはYouTubeで通用しない」そんな常識を覆した石橋貴明のほぼテレビ動画の異常性の画像2
 また、シリーズ企画がやたらと多いのも特徴です。おヒマな時にYouTuberのチャンネルを覗いて動画のラインナップを見比べてみてください。YouTuberは基本的にシリーズ企画をやりません。毎日のように動画を世に出すYouTubeの世界では、企画の消費がテレビの何倍も早い。それは「飽きられる」のが早いということ。シリーズものは2回目以降再生数が下がることがほとんどなので、YouTuberは毎回新企画で勝負するのが常識。これはテレビとの大きな違いです。

 にもかかわらず、『貴ちゃんねるず』はシリーズ企画ばかりやっているのに、極端な下がり方をしていません。たとえば『アラートラン』過去4回の再生数は、242万→219万→132万→106万という推移。下がってはいるのですが、登録者数を考えれば100万再生レベルの数字を残しているのは上出来です。

 その大きな要因は、客層にあるのではないかと推測しています。他のチャンネルに比べて、40~ 60代が多いのではないでしょうか。59歳というタカさんの年齢を考えれば当然だと思うかもしれませんが、これは画期的なこと。「YouTubeでエンタメ動画を見る」という習慣があるのは、主に10~20代。40代以上は完全にテレビ文化で、これまでYouTubeとは縁がなかった。しかし、石橋貴明というカリスマが慣れ親しんだテレビ的コンテンツを発信することで、40代以上もYouTubeを見るようになった。だからシリーズ化していても充分に回るのではないでしょうか。

 となると、逆もありえます。YouTubeでやった企画が、テレビに逆輸入されることもあるかもしれません。テレビとYouTubeの壁をぶち壊すタカさんが、これからどんなことを仕掛けていくのか、本当に楽しみです。

谷田彰吾(放送作家)

クロスボーダークリエイター・放送作家 / TVクリエイターギルド 株式会社VVQ代表 ドキュメンタリー番組『プロ野球戦⼒外通告』『バース・デイ』、有吉弘⾏、乃⽊坂46、池上彰などのバラエティ番組を構成。YouTubeでは『上原浩治の雑談魂』などを担当。放送作家だけでなく広告プランナーとしても活動。業界の垣根を超えたクロスボーダークリエイティブがモットー

YouTubeには手を出すな

Twitter:@VVQ_SHOWGO

【VVQ】

たにだしょうご

最終更新:2021/01/02 14:33
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