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日刊サイゾー トップ  > ビル・バーが訴える “ウォークカルチャー”の危うさ
スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会【13】

ビル・バーが訴える “ウォークカルチャー”の危うさ「アメリカの抗議活動は白人女性に“ハイジャック”された」

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Billburr写真/GettyImagesより)

 今回も10月10日放送された人気番組『サタデー・ナイト・ライブ』で披露された作品から、アメリカ社会を考察する。前週のクリス・ロックに引き続き「ホスト」と呼ばれる司会はスタンダップコメディアンのビル・バーが務めた。

 ビル・バーは日本ではあまり聞き馴染みのないコメディアンかもしれないが、アメリカでは”Comedian’sComedian”(コメディアンに愛されるコメディアン)と評され、これまでシーンの中で非常に大きな影響力を持ってきた、玄人ウケする実力派。2007年にいち早く開設した自身のポッドキャストは、彼の代名詞として多くのコメディファンに聴かれている。

 彼の特色は怒りと皮肉に満ちたエネルギッシュなジョーク。忖度とは無縁なそのスタイルで度々物議と論争を呼んできた。自身を「典型的な白人男性」と称するビル・バーは、そのステレオタイプを時に全身に纏いながら、むき出しのことばで熱く観客に語りかけてきた。

 意外にも『サタデー・ナイト・ライブ』のホストを務めるのは今回が初めてという。後に自身のポッドキャストで振り返っていたように、本番前は極度の緊張に襲われていたという。アメリカでは伝統的に地上波テレビ放送での検閲が厳しく、Fワードなどの放送禁止用語や露骨な下ネタはご法度。そんな中で彼がどんなネタで攻めてくるのかと、多くのファンは期待していたに違いない。

 案の定、出だしからコロナウィルスに対する皮肉たっぷりのジョークで会場を沸かしてみせると、「こんなジョークを言っていたら、おそらく俺は“キャンセル”されちまうな」とボヤいた。

 差別に敏感な「ウォーク・カルチャー」と呼ばれる風潮が発展し、そのような発言をした人をボイコットしようという「キャンセル・カルチャー」が高まりを見せる現状に言及した。

 実際『サタデー・ナイト・ライブ』でも19年、新キャストとしてレギュラー出演が発表されたコメディアンが過去のツイートを掘り起こされ炎上し、番組側が急遽彼の出演を取りやめたという事例もある。

 そのような状況でビルは、その風潮の中にいる「白人女性」に牙を向いた。

「そもそもウォーク・カルチャーって、平等な機会を求める有色人種のための運動じゃなかったっけ? なのにいつの間にか白人女性が“ハイジャック”しちまったんだ。今や彼女たちがなぜか、抗議の最前線で叫んでる。こんなに白人女性が文句を言っているアメリカを、これまでの人生で経験したことがないよ」

 今年、広がりを見せた「ブラック・ライブス・マター」運動に参加した白人女性たちのことをジョークにしているとも取れるこれには、会場の観客も苦笑い。

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