藤井隆が語る「青春の色合いを変えた」角川映画の真髄と役者
#映画 #藤井隆 #角川春樹
浅野温子のおかげで驚くほど自然にできた夫婦役
——今回角川監督自身が「生涯最後」とおっしゃっていますが、現場の雰囲気はどういった感じでしたか。
藤井 私が勝手に緊張したり勝手に舞い上がったりしていただけで、実際の現場はすごく穏やかだったと思います。自分が携わってるシーンの話ですが、実際カメラ回すまでは、本当にじっくりと時間を取ってくださって、こうストンと落ちるまで教えてくださったので、ピリピリしたり荒ぶってたりとか、そういう雰囲気とは無縁でした。
それはひとえに監督と、監督のことを信頼して、角川さんのことを好きな人が集まってる場所だからだと思いますね。音声さんやお衣装さんやメイクさん、自分に近い場所にいるスタッフさんが本当に優しくしてくださって心強かったですし。音声さんがご自身のベースのところにさりげなく椅子を用意してくださって。そこで他愛もない話をしながらリラックスさせてくださったりしました。「角川映画」とか「角川春樹」ということに勝手に盛り上がってるのは自分だけで、それ以外は実は本当に穏やかだったんじゃないかなと。今振り返って冷静に考えるとそう思います。
——アドリブはありましたか?
藤井 僕に関してはなかったと思います。
——劇中の浅野さんと藤井さんのやりとりが本当に楽しそうで、もしやこの辺りはアドリブなのでは?と思っていました。
藤井 そうですね! セリフが終わってカットがかからないと浅野さんがカットがかかるまでアドリブでつないでくださいました。自分も役として、この距離感で出た言葉とか出る言葉がきっと、あったと思いますね。アドリブだということを今聞かれるまで忘れてたぐらいなので、たぶん普通にそれは「はいカット!」がかかるまでの間の、お互いが持てる、みんなが持てる“台詞”だったんじゃないでしょうかね。
——藤井さん演じる清右衛門は戯作者(作家)の役ですが、どういう人物像を描かれましたか。
藤井 そうですね……僕はどんな仕事でもそうなんですけど、自分ひとりだけで考えることに限度があると思っています。やっぱり現場で、お衣装やメイク、セットの中で感じること、あとは何より共演者の方が話すセリフやお芝居からいただけるものにいちばん影響されると思っていますし、楽しいことです。
今回も、持ち道具さんが「小説家なのでメモをするんじゃないか」って、手帳と筆を入れる袋を作ってくださったんですね。でも……本当にね、バカなんで、繋がりが難しいから、そんなに自由に小道具僕は操れないんですね。だからもう割とドンと置いたままでやってきたんですけど、本当に撮影の最後の最後の日にね、その方がね「実は…」って明かしてくださった。メッセージをそこに書いててくださったんですよ。20年ぐらい前の、あることをそこに書いてくださってて……ああそんな愛情深い方に、僕は道具を作って持たせていただいてたんだ、この期間……と思うと、もう本当に胸が震えました。もし僕に余裕があればその袋を「ちょっと使ってみようかな」つって、こうやって広げて「あれ?なにこれ!?」って気づけたかもしれないけど、僕が一向にそれを使うことが出来なかったので……(笑)。でもそれをね、最後くださったんです。この映画には撮影期間で色々なものを頂きましたけど、物だけじゃなく、気持ちもいっぱいいただきましたけど、あの手帳は本当に大事な宝物です。
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