トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > テレビ  > 『フリースタイルティーチャー』ぶるまVSゆりやん

『フリースタイルティーチャー』紺野ぶるまがゆりやんに貫いた下ネタは、“負け”続けてきた芸人の矜持

『フリースタイルティーチャー』紺野ぶるまがゆりやんに貫いた下ネタは、負け続けてきた芸人の矜持の画像1
ゆりやんレトリィバァTwitterより

 10月7日放送の『フリースタイルティーチャー』(テレビ朝日系)は芸人同士の総当りバトル、2ndステージの最終戦。カミナリ・石田たくみ(ティーチャー:DOTAMA) VS レイザーラモンRG(ティーチャー:KEN THE 390)紺野ぶるま(ティーチャー:TKda黒ぶち) VS ゆりやんレトリィバァ(ティーチャー:TKda黒ぶち)の2試合が行われた。

RGが『半沢直樹』ばりのバイブスでカミナリたくみの技術を押し切る!

 第1試合はたくみ VS RG。前回のバトル優勝者と最下位という顔合わせだが、今回のバトルにおいて両者はまさかの全敗同士である。

 4人の芸人の中で最も音楽が好きそうなのに、今までで一番伸びしろを見せられなかったRG。最後の最後に、彼がいよいよ化けた。RGが突いたのは1stバトルのチャンピオンにもかかわらず、たくみが番組外で『フリースタイルティーチャー』の告知をしていない点についてだ。

RG  「でもな お前は最大の罪を犯してる
    お前は この番組の告知をしてない
    お前はSNSで全然 告知してない マネージャーも全然してないない
    お前が優勝した大会だろ ちょっとは告知しろ この馬鹿小僧」

 でも、実のところたくみはTwitterをやっていないのだ。だから反論した。

たくみ 「でも 拡散Twitterやってねぇ 助さん格さん
     茨城だったら 水戸黄門みたいな感じ
     俺のライムが目に入らんか ボケ」

 拡散→助さん格さん→水戸黄門で絡めるたくみのテクニックはさすがだが、2人のバトルはラップというより言い合いを見ているみたい。この展開だと、しつこいくらいに告知告知と連呼するRGの追及が強く際立ってくる。

たくみ 「大体Twitter 繋がりたくねぇ人と繋がっちまうから 俺はやめた
     俺は現時点でリアルなやつ こういうお前と会話できてる方を選ぶ」

RG  「その熱いメッセージも告知しないから 伝わりません
   今日のお前の戯言 全く誰にも伝わりません」

「告知しないと伝わらない」という指摘は、まさに! 目のつけどころがお見事だ。そして、RGが大爆発した。

RG  「あと(カミナリの)マネージャーなんだ この当日だけ
    『今日 フリースタイルティーチャーにたくみが出ます ニコッ』
    のあの写真なんだ
    詫びろ 詫びろ 詫びろ マネージャー この場で詫びろ」

 あの『半沢直樹』(TBS系)から、まさかのサンプリング! たくみの技術をRGがバイブスで押し切り、このバトルはなんとRGが勝利した。嘘みたい! RGを指導したケンザは、「大振りなパンチをかわされ続けたのが最後に当たった。当たればデカいというのを証明できた」と振り返ったが、まさに大ぶりパンチがヒットしたという印象。RGがバイブスでたくみのスキルを上回る番狂わせだった。

紺野ぶるまの芸人人生が凡庸なライムを必殺のパンチラインに変えた

 第2試合は、ぶるま VS ゆりやん。2人のバトルの序盤は、松竹芸能(ぶるま) VS 吉本(ゆりやん)の代理戦争が行われているかのようだった。

ぶるま  「どこが同じ状況だよ テメェは 吉本の首席だろ
      こちとら松竹芸能 泥水啜って咲いた花だぜ 
      でも 高嶺の花は咲く場所 選ばねぇ
      良かったら この一輪の花を花瓶に生けてください
      あ ちなみに私は過敏にイケる女ですよ」

 「花瓶に生ける」と「過敏にイケる」を踏んで自分らしさを保ちつつ、下には下の意地があると表明したぶるま。そして、所属事務所だけでなく芸人としても下から見上げる立場だったとぶるまは訴えた。

ぶるま  「この2カ月 恨み節じゃねぇぜ
      テメェに この何年も負けたがってた 私はここで勝ちに来たんだ」

 2人はともに『女芸人No.1決定戦 THE W 2018』(日本テレビ系)に参加しており、同大会で優勝したのはゆりやんだ。本業のネタ勝負ではゆりやんのほうが上。どうせ勝てないならおいしい負け方を選び、違う角度からイジってもらいたい。「テメェに何年も負けたがってた」と負け癖がついたぶるまが、不意に巡ってきた1 VS 1のシチュエーションで、雲の上のゆりやんに初めて勝ちに行く。これは女芸人としての再生物語でもあるのだ。

 もちろん、ゆりやんにも言い分はある。何の苦労もなく『THE W』チャンピオンになったわけでも、NSC首席になったわけでもない。今まで柔和な雰囲気を崩さなかった彼女が、遂に第二形態に変身した。

ゆりやん 「何年も売れてねぇか そんなの知らねぇよ
      こっちは たまたまじゃねぇんだよ 努力してんだよ
      勝ってここにいるんだよ NSC首席 取ってんだよ
      歯の歯石も取って来てんだよ
      お前は取れよ歯石 歯 黄色いんだよ 白い心 持てよ
      お前どこどこ見てんだよ こっち見ろよ バトル中だろ
      語れよ 語れんだろ 固ぇんだろ
      この私は 韻が固ぇんだよ お前はインカ帝国 帰れよ」

 下には下の意地があるのなら、上には上の矜持がある。あのゆりやんが巻き舌を巻いて、ケンカ腰でぶるまを潰しにかかった。これは2ndステージで指導してくれたティーチャー、輪入道流だろうか? そんな激情を放ちつつ、「韻が固ぇ」と「インカ帝国」で踏んでいるのはさすがなのだが。

 やはり、MCバトルは気持ちがぶつかり合うと面白い。まるで口喧嘩。殺伐としてるのに、それでいて両者にセンスがあるし、文句なしの名勝負だと思う。あまりのクオリティの高さから、前番組『フリースタイルダンジョン』を思い出したほどだ。きっと、2人はその辺のフィメールラッパーより強いと思う。

 1―1でもつれ込んだ第3ラウンド、沸点に達しながらもぶるまは自分流を貫いた。

ぶるま  「こちとらゆりやんの事ばっか考えてたよ
      主婦だけど掃除機かけながら清掃してたよ
      頭の中も整理整頓 そう清掃 
      引っ込んでろよ【コンプラ】 意味が分かる?
      前回の勝ちはたまたまだよ 引っ込んでろ【コンプラ】」

 清掃(精巣)とたまたま(金玉)をかけながら、決してバトルに水を差していない。でも、ゆりやんは許せなかったようだ。

ゆりやん 「【コンプラ】とかもうほんま下ネタ いい
      もうネタは ここで終わり」

 違う。ぶるまは下ネタ1本でやってきた芸人だ。このスタイルを貫くことは、彼女にとってのプライドである。

ぶるま  「私だって おまえの壁 ずっと越えたかったよ 常に怖かったよ
      でも あんたと同じ舞台 何で立ってるか 分かるか?
      ダンスも出来ねぇ 歌も出来ねぇ
      けど【コンプラ】1本オリジナル こだわりでやってきたんだ
      突き破る 鬼になる これこそがサガミよりもオリジナル」

「下ネタはもういい」と言われながらも下ネタを貫いたのは、それがぶるまのオリジナルだから。「鬼になる」と「オリジナル」を踏むのはよくあるライムだけど、ちんこ謎掛けをし続ける彼女が人生を乗せて放つからこそ、必殺のパンチラインになる。あれだけ人生を開示しておいて、最後に「サガミよりもオリジナル」で締められたら誰も文句は言えない。今までの芸人人生があったから、価値あるラップになったと思うのだ。

 ちなみに、「サガミよりオリジナル」のパンチラインは、般若の楽曲『最っ低のMC』からのサンプリングだ。熱さ、人生、HIP HOP愛を含めた全てが最高。下ネタでこんなに感動したのは生まれて初めてだ。このバトルは、2-1でぶるまの勝利に終わった。2ndバトルの優勝者は、紺野ぶるま!

「ゆりやんとは芸人としてずっと戦ってきて、いつも負けてきて、けど、なんで負けてるんだろう? と考えたときに、黒ぶち先生から『気持ちがあれば絶対に勝てるよ!』って言われて。HIP HOPで、すごい人間も更生された気がします」(ぶるま)

●メンバー総入れ替えの新Seasonもバトルは2回行ってほしい

 1stシーズンと2ndシーズンを通してのMCバトル総当たり戦には、物凄くストーリー性があった。正直、1stシーズンのぶるまは見ていてどうなることかと思った。あの姿を見て、優勝を果たすなんて想像できるわけがない。しかも、彼女の成長の糧になったのは「今まで売れてこなかった」という自分への歯痒さ、苦労、そして意地だ。ぶるま視点で考えれば、ゆりやんとの決勝はまるで少年マンガのクライマックス。「HIP HOPで人間が更生された」、なんていい言葉なのだろう。バイブスと下ネタを両立させるフリースタイル、いいものを見せてもらった。

 また、「HIP HOPはテクニックだけではない」と最後の最後にぶるまとRGが証明してくれたのも良かった。ラッパーとしての資質が高いのはゆりやんとたくみだけれど、感動させてくれたのはぶるまだった。まさに、「常に研究 常に練習」「オレは天才じゃないんだ 逆にオレにゃ限界は無いんだ」の歌詞でリスナーを励ましてきたライムスターの名曲『K.U.F.U.』の世界だ。全てをひっくるめて振り返ると、メンバーを入れ替えず総当たり戦を2回行ったのは正解だったと思う。

 2ndステージ終了後、エンディングで行われたぶるまとTKのウイニングサイファーは泣けた。

ぶるま  「アンタ(TK)の教えがいいからだよ
      あとDOTAMAもありがとう 感謝してるよ
      いつも眼鏡かけてる アンタらのお眼鏡に適ったぜ
      だけど それカチ割るくらい 常に戦ってたよ
      このまま死ぬと思ってたよ 勝利知らないままここでは死ねない!」

 さあ、次回からはSeason2に突入だ。ラッパーティーチャーとスチューデントを入れ替え、新たな総当たり戦がスタートする。やはり、今回のようにバトルを2回行わないと本当の成長は見せられないと思う。もうすぐ明かされる新メンバーの人選が楽しみだ。

 次回予告を見て笑ってしまった。ティーチャー側で1番手前にいるラッパーが、明らかに見たことのある体型をしているのだ。あれは、すう【コンプラ】では? いや、みなまで言うまい。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

記事一覧

サイト:Facebook

てらにしじゃじゅーか

最終更新:2020/10/13 15:00
ページ上部へ戻る

配給映画