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『麒麟がくる』谷原章介の芝居が光る! 大河ドラマ登場たった2回のレアキャラ「三淵藤英」とは何者なのか

室町幕府の将軍の価値が大暴落!

『麒麟がくる』谷原章介の芝居が光る! 大河ドラマ登場たった2回のレアキャラ「三淵藤英」とは何者なのかの画像1
『麒麟がくる』公式サイトより

 それもこれも室町幕府の将軍の価値が暴落している証しなんですね。実力ある武将が、自分に都合のよい者を将軍にして、その形ばかり残った権威を利用する。結局はルール無視の椅子取りゲームみたいなもので、誰かがすでに座っている椅子なら、座面を力ずくでも奪おうとしているわけですね。まさに乱世……。

 今回のドラマでは織田信長(染谷将太さん)が、ついに足利義昭を美濃に招き、共に上洛する意思を明確にしましたが、ドラマでは省略された煩雑なアレコレが実際にはありました。

 実は足利義昭は、織田家に一度、裏切られているのです。「上洛する」と約束はしていながら、美濃の斎藤家との戦、いわゆる「美濃攻め」が忙しくなると、約束をほったらかして戦に出ていかれたこともあったのです。

 よく言われることですが、戦国大名は領地の経営が一番大事、目の前の問題を無視することなどできません。将軍を奉じて一緒に上洛するなどという余裕があるケースのほうが珍しいのですね。一方で織田信長に約束を破られた足利義昭のほうも、実は上杉家や武田家を共に上洛してもらうパートナー候補として念頭に置きつつ、織田にも粉をかけていたという感じではありました。

 それでも彼らの動きがことごとくニブいので、仕方なく越前の朝倉家を頼った……という経緯までありました。なかなか相手が決まらず、妥協したのにさらに見つけられなくてイライラするという婚活での一幕みたいな感じではあります。

 その頼りの朝倉家も1年あまりも動いてくれない! となると、本当に足利義昭としてはストレスフルな日々だったと思います。かつての大河ドラマ『秀吉』(1996)では玉置浩二さんが、なにかとイライラし、ヒステリックな足利義昭を好演なさっていた記憶があるのですが、史実に近かったのは、玉置版かもしれません(笑)。

 足利義昭のセリフにもありましたが、「私は力が弱い」というのは、謙遜でもなんでもないリアルな言葉だったと思いますよ。ただ、『麒麟がくる』の足利義昭については、もともと彼が僧職だったということを意識して滝藤賢一さんが演技されているように感じられます。なにか達観したような姿からは独特の高貴さも出ていますよね。そういう人から「お前を信じる」と言われたら、明智光秀も動かざるを得ないなぁという印象です。

 高貴な人の生存スキルとして、誰かにうまくお世話してもらえるような空気を醸し出すということがあるかもしれません。ドラマの中の足利義昭、現時点ではそれがすごくうまいですよね。ああいう達観した人なのに、織田信長とはどのような経緯で関係悪化に至ってしまうのか、それをどうドラマでは描くのか、楽しみです。

 ドラマのラストでは足利義昭上洛に協力するため、明智光秀の一家も散り散りに……ということになりました。そんな中、明智の妻・煕子役の木村文乃さんは自分が、妻として明智に協力できる喜びを抑えながらも、美しく演技なさっていて印象に残りました。出番やセリフの数自体は少ないけれど煕子、いいセリフをもらっているなぁ……。それではまた次回。

堀江宏樹(作家/歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。原案監修をつとめるマンガ『La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~』が無料公開中(KADOKAWA)。ほかの著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

Twitter:@horiehiroki

ほりえひろき

最終更新:2023/02/21 12:07
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