内海桂子師匠は芸人魂の塊だった! 元マセキ芸人が回想する80歳目前で挑戦したぶっ飛びネタ
#お笑い #内海桂子
80歳目前にして前のめりの“芸人魂”
まず相方だった与座よしあきの顔の濃さに気づいた師匠が
師匠『あなた顔濃いね~。どこの人?』
相方『沖縄です』
師匠『じゃああれ弾ける? 三線(沖縄の三味線)』
相方『はい、弾けます』
師匠『じゃあ三線弾きながら漫才やりなさい。絶対良いから』
二人『はい。ありがとうございます』
結果的に、お会いするたびに上記のくだりは毎回された。少なくとも数十回、覚えてもらえるまでは必ずされていた。三線を弾きながら漫才をするということに古さを感じ、あまり素直にそのアドバイスは聞くことが出来なかった。
これがひとつ目の思い出。そしてもうひとつ、僕が強烈に記憶に残っている事がある。たまたま師匠と同じ演芸番組に出させていただいた時のこと。
自分たちのネタが終わり、師匠のネタを見ようとスタジオにいると、マネジャーさんが僕たちの横に来てボソっとこう言った
「今日の師匠のネタは自虐ネタだよ」
衝撃を受けた。
当時ヒロシが流行り初めていて、この形はアリだと判断した桂子師匠が三味線を片手に自虐ネタを作ったのだ! 80歳を前にして新しいネタに挑戦するという常に前傾の芸人魂。ネタ自体はどこが自虐で、どこがヒロシなのかはわからなかったが、その芸人としての姿勢は本当に見習わなければいけないと心に刻んだ。
最後に、このコラムを書きながら思い出したことを書いてみる。
地方での営業で、「音楽とネタを絡めて何かできませんか?」と言われ、相方が三線を弾きながらボケる漫才を作って披露した。初めてということもあり、つかみがあまりうまくいかず、笑いが欲しいところでは、起きなかった。
ところが、不安を抱えながらとりあえずネタ通りに三線を弾き始めると、お客さんが笑顔になり場が盛り上がったのだ。ボケて笑わせるだけがお笑いではなく、音楽で笑顔にするのもお笑いだということを知った。
今思えば、あの時のアドバイスは、長年老若男女を相手にする大衆演芸の世界に身を置いた桂子師匠ならではであり、長くこの業界にいるがゆえの助言だったのだろう。
いつか僕たちがあっちへ行って師匠に会う時にはすっかり忘れられていて、またあのくだりがあるはず。次こそは素直に聞こうと思う。生き様で芸人道を見せてくれた内海桂子師匠、『お疲れ様でございました』。
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