『チコちゃんに叱られる!』喜劇王・チャップリンが発明した“バナナ滑り”に岡村とチコちゃんの血が騒ぐ
#チコちゃんに叱られる!
トイレットペーパー1ロールの原価は150万円!?
この日最後のテーマは「なんで硬貨には製造年が書いてあるの?」という疑問。チコちゃんが発表した正解は、「そういうデザインだから」という元も子もない真理であった。詳しく教えてくれるのは、大阪経済大学経済学部の高木久史教授だ。
高木教授 「1円玉や10円玉などの硬貨に製造年が書いてあるのは、言ってしまえばそういうデザインだからなんです」
――ということは、特に理由はないってことですか?
高木教授 「はい、今はありません」
でも、日本のお金の単位が「円」になり、貨幣制度が近代化された頃には製造年が刻まれる理由があった。関わっていると考えられるのは金本位制だ。金本位制とは、金をお金の価値の基準とする制度のこと。国が持っている金の量に応じて通貨を発行し、その通貨を同じ価値の金と交換できることを国が保証するのだ。金本位制が始まったのは19世紀初頭のイギリスである。産業革命で一躍世界経済の中心となったイギリスは大量生産した商品を世界中に売ろうとしたが、当時、各国の通貨の価値は国によって様々で、世界共通の基準がなかった。つまり、アメリカの1ドルがイギリスのポンドだといくらになるのかはっきりとわからなかったのだ。
そんな状態で世界中と貿易をすることに不安を感じたイギリスは、世界共通の価値を持つ金を基準とする金本位制を世界で初めて採用。イギリスが保有していた金の量に合わせて通貨を発行し、1ポンドを金およそ7.3グラムと定めた。この金本位制を世界中の国が取り入れれば、各国と安心して貿易ができると考えたのである。実際、イギリスと貿易をしたいアメリカやフランスなどは金本位制を導入し、その国が持っている金の量に合わせて通貨を発行するようになった。これによって、それぞれの国のお金同士の価値を比べることが簡単になる。アメリカは1ドルを金およそ1.5グラムと定め金貨を発行した。つまり、1ポンドは5ドルとほぼ同じ価値。フランスは1フランを金およそ0.3グラムと定めた。つまり、1ポンドは24フランとほぼ同じということになる。
欧米の国々が金本位制を取り入れつつあるのを見た日本もそれに追いつこうとし、1871年に金本位制を取り入れた。日本は1円を金1.5グラムと定め、その金の量を含んだ1円金貨を作ることにした。しかし、それまで日本が作っていたお金は世界で信用度が低かった。実は、日本は明治維新直後も金貨や銀貨を造っていたが、偽造が多く品質も悪かったため、日本のお金は外国から信用を失っていたのだ。そんなときに新しいお金を造ったところで「これ、本当に金1.5グラム入ってるの?」と疑われるのは当然のこと。そこで明治政府はイギリスから硬貨を造る機械を購入し、1.5グラムの金がちゃんと含まれている硬貨を製造する。そのときに製造年を入れることで、「その年に造られた金貨には間違いなく金1.5グラムが含まれている」ということを明治政府が保証したのだ。その後も毎年硬貨に含まれる金の量を検査し、ちゃんと正しい量が含まれていることを世界に向けて公表。もし硬貨に含まれる金の量を変えた年があったとしても、製造年が書かれているのですぐにその硬貨の価値がわかる。実際、1897年に金貨に含まれる金の量をそれまでの1.5グラムから0.75グラムに変えた際は、製造年が刻まれているおかげで他の年に造られた金貨との価値の違いが一目でわかった。こうして、日本の硬貨は世界から信用を得たのである。
その後、世界的に定着していた金本位制は次第に終わりを迎えた。金本位制ではその国が持っている金の量と同じ分しかお金を発行できないが、第一次世界大戦で世界の国々は軍事品を金で大量に購入したため、お金を発行するのに必要な金がなくなってしまったのだ。こうして、そのときの経済状況によってお金の発行量を自由に管理できる現在の管理通貨制度へと徐々に移行していき、金本位制は終わった。
現在、私たちが普通に使っている硬貨は金が含まれておらず、金属の価値と硬貨の価値とは関係がない。そのため、本来であれば製造年を刻印する必要はないが、金貨が流通していた頃の名残から現在も硬貨には製造年が書かれていると考えられている。
「つまり、今となっては硬貨に刻まれた製造年というのはデザインの一部みたいなものなんです。あと、あったほうがなんとなく締まりが良くなるように私は思います」(高木教授)
そういえば、令和の硬貨をあまり見かけない気がする。電子決済ばかりで硬貨ほぼ使ってないせいかもしれない。
ちなみに、紙幣に製造年は書かれていないがそれには理由がある。紙幣は硬貨と違い、寿命は長くてせいぜい4~5年。市場に出回って古くなった紙幣は日本銀行へ戻され、汚れや破れの程度などのチェックを受ける。ここで使えないと判断された紙幣は裁断され、そのほとんどは焼却されるのだ。つまり、寿命は平均4~5年の紙幣に製造年を入れる意味がないということだ。
ところで、古くなって裁断された紙幣の焼却されなかった分はどうなるのか? 実は、最近は様々なものへリサイクルされている。例えば、ATMの横に備えつけられている現金袋は、1袋分の素材の30%に1万円札がおよそ1枚分混ざっている。無料で使える現金袋だが、実は1万円なのだ。トイレットペーパーの1ロールに混ざっている紙幣の量は、(物によってまちまちだが)最大150枚分のお札からできているらしい。トイレットペーパー1ロールはおよそ50円だが、全て1万円札でできていたら原価は150万円にまで達する可能性もあるということ。我々は150万円でお尻を拭いているのか……。
「これをもし元の紙幣に戻すことができればウハウハですね」(高木教授)
確かに! ドラえもんの「タイムふろしき」をトイレットペーパーにかぶせると、150万円になるのかしら? これからはトイレットペーパーも無駄遣いできなくなるな……。あと、このテーマの答えは「そういうデザインだから」ではなく、「金本位制の名残」とするほうが適当な気がした。
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