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『麒麟がくる』義輝の最期と“美しすぎる天皇”の登場──史実とドラマ、両方で見る室町幕府の失落劇

坂東玉三郎“おごそかな登場シーン”は史実に沿っている?

『麒麟がくる』義輝の最期と美しすぎる天皇の登場──史実とドラマ、両方で見る室町幕府の失落劇の画像4
坂東玉三郎(文部科学省ホームページより)

 さらに今回、はじめて「美しすぎる天皇」こと正親町天皇(坂東玉三郎さん)が登場しましたね。あの静かでおごそかな登場シーン、けっこうリアルだと感じました。

「面(おもて)をあげよ」的なセリフもなしに、近衛前久(本郷奏多さん)の奏上がはじまりましたが、実際、貴人との面会というのはああいう感じなのです。高貴な人の登場は、絶対的な静寂をもって迎えるというのが、日本の歴史の中では正しいのでした。

「シーッ」という現在でも静かにさせるときに使う擬音ありますよね。当時から、あれが用いられることもありました。文字にすると「しし」。ほかには「おお」などのバリエーションもあるのですが、これらを「警蹕(けいひつ)」というのです。あの擬音にも思わぬ歴史があるわけなんですね。まぁ、これも現代人には伝わりにくいので、ドラマでは「お出ましになられました」というセリフが代わりに用いられていましたが。

 御簾の向こうなので顔もはっきりとは映らず、ぼんやりとした影のような姿が見えただけでしたが、その動きだけでもさすがは坂東玉三郎。威厳がありました。

 歌舞伎にはほとんど動かないのに、存在感だけを出し続けねばならない役というのがあります。特に古典歌舞伎における帝や将軍など、高貴な人の役はだいたいそうですね。難しいんだろうなぁ……と今回のドラマでも感じました。

 実際のところは、というと、亀治郎時代の市川猿之助さんにインタビューする機会が筆者にはあり、「ああいう役は他とは違った風に難しいのですか?」と聞くと「動かなくていいから簡単ですよ!」などと即答されてしまったので、ああいうのは生まれ持ったカリスマ性なんでしょうね(笑)。それではまた来週!

堀江宏樹(作家/歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。原案監修をつとめるマンガ『La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~』が無料公開中(KADOKAWA)。ほかの著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

Twitter:@horiehiroki

ほりえひろき

最終更新:2023/02/21 12:09
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