超難解な内容でも、リピーター効果で大ヒットに ノーラン監督が仕掛けた高等パズル『テネット』
#映画 #パンドラ映画館
潜在意識の世界が具象化された世界を『インセプション』(2010)では描き、『インターステラー』(14)ではワームホールを使った惑星間航行を観客に擬似体験させた。クリストファー・ノーラン監督は、人類がまだ見たことのない未知の世界を映画館の闇の中に次々と生み出してきた。9月18日から日本公開が始まった新作『TENET テネット』も、これまでになかった映像&音響世界が繰り広げられている。世界興収はすでに2億5,000万ドル以上を記録、日本でも初日から5日間の興収は7億円超えという大ヒットスタートとなった。
ノーラン監督にとって11作目となる『テネット』は、もはや映画と呼ぶには適していない作品かもしれない。少なくとも、従来の映画のように受け身で鑑賞する人間ドラマではない。ノーラン監督のブレイク作『メメント』(00)も一度観ただけでは理解することが難しい作品だったが、『テネット』はそれを大きく上回る。『メメント』にはパズルを解くような面白さがあったが、『テネット』はより複雑な立体パズルを思わせる。
多くの人はこの難解な立体パズルを解くために、複数回にわたって映画館に足を運ぶことになるに違いない。一度目は、現在から未来へと進む時間軸と未来から現在へとさかのぼる時間軸が同一世界に混在することに戸惑い、気づいたときにはエンドロールが流れ始めている。だが、最初からもう一度観ると、頭の中で混乱を起こしたシーンのひとつひとつが辻褄が合っていることが分かる。苦労してパズルを解いたような快感を覚える。
主人公となるのは、名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントン)。ウクライナのオペラハウスでテロ事件が発生し、特殊部隊がオペラハウス内に突入する。特殊部隊の一員である名もなき男は、任務中に危うく命を失うところだったが、顔の見えない謎の男に救われた。命拾いした名もなき男は、ある秘密組織から第三次世界大戦の危機から人類を救えという壮大なミッションを下される。
人類が滅亡の危機に瀕する第三次世界大戦をもたらすのは核兵器ではなく、未来で開発される最新テクノロジーだった。エントロピーが増大することによって時間は一方方向へと流れているわけだが、このエントロピーの流れを逆転させることで時間を逆行させることが未来社会では可能となっていた。だが、その時間逆行は人類はおろか世界全体を消滅させる危険もはらんでいる。
名もなき男は「テネット」を合言葉に、人知を超えた究極のミッションに挑む。
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