満州引き揚げ者が「焼き餃子」を普及! 本場とは異なる“日本風中国料理”進化のヒミツ
#中国 #グルメ
“定食”のフォーマットに乗った町中華
また、「味の素」に代表される化学調味料の存在も無視できない。
「化学調味料は90年代から急にイメージが悪くなり、“うま味調味料”と言い換えられるようになりました。でも、それ以前は『きょうの料理』などのレシピにも当たり前のように登場していましたし、店主に取材しても『あれを使えば、大体同じ味になる』とおっしゃる方が多い。加えて、あの味を欲するお客さんも確かにいるんですよね」(同)
そんな町中華も、今では店舗数が激減している。主な原因は後継ぎの不在だといわれるが、消えゆく外食形態であればこそ、いわゆる昭和ノスタルジーの一環として懐かしまれている部分もあろう。その一方で、90年代以降に新規参入が増えているのが、中国からやってきた人が経営するネイティブ系の中華料理店だ。
「ネイティブ系は従業員も大半は中国の人なので、いかにも本場っぽい雰囲気があります。ただ、それでも焼き餃子やエビチリなど日本人に人気のメニューも用意され、ランチタイムには白米を中心に据えた日本式定食が出されるなど、日本の食環境へのローカル化がなされています。また、スパイス類にしても、四川風麻婆豆腐が流行したため、より辛みの強い唐辛子や花椒はよく使われますが、日本人にあまりなじみのない八角などは避ける傾向にあります」(同)
もっとも、同じネイティブ系でも、首都圏でいえば埼玉県の西川口など中国系の住民が多い地域では、日本化されていない中華料理を提供する店もあり、「逆にそれがいい」という日本人もいる。つまり、そこには特殊なニーズが生まれているのだ。
おそらく、これらネイティブ系の中華料理店は町中華と代替可能ではないし、「味の素」の味がする中華料理が消滅しつつあるのは寂しくもある。しかし、日本における中華料理のあり方は刻々と変化しており、今後も日本風中国料理は独自の進化を遂げていくのだろう。(取材・文/須藤輝)
※本記事は、サイゾーPremiumより転載したものです。
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