ドコモ口座不正引き出し事件は安倍政権のキャッシュレス政策が引き起こした負の遺産
#ドコモ
キャッシュレス化に遅れを取ったDocomoの怠慢
政府は2014年の「改訂日本再興戦略」でキャッシュレス化の推進を打ち出した。成長戦略として「2020 年オリンピック・パラリンピック東京大会等の開催等を踏まえ、キャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性の向上を図る」ことを掲げ、キャッシュレス化を推進し始める。
そして、「未来投資戦略2017」では10年後(2027年6月)までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを重要目標と位置付けた。当初、政府によるキャッシュレス化の推進は、観光立国の実現に向けた訪日外国人旅行者へのサービスの拡充と位置付けられていた。
しかしその後、キャッシュレス化への取り組みは、①インバウンド対応、②FinTech振興、③決済高度化―の3分野で進められることになる。FinTechとは、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、ファイナンス・テクノロジー(financial technology)を指し、情報処理技術を用いた新たな金融サービスを言う。
FinTech分野では経済産業省を中心に、主にクレジットカードの購買履歴の活用が検討され、2017年5月にはキャッシュレス化による購買履歴の捕捉が FinTech 振興の鍵とする「FinTech ビジョン」が取りまとめられた。
さらに、2027年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度とする目標は、2025 年日本国際博覧会(大阪・関西万博)へと2年前倒しとなった。そして、2017年7月には経産省の“音頭取り”で産学官連携による「キャッシュレス推進協議会」が設立された。
一方、決済高度化では金融庁を中心に、決済制度の見直し検討が進められ、2016年以降、FinTech の台頭に対応した銀行法改正等の一連の法整備が行われている。
政府による一連のキャッシュレス化推進の中で、2019年10月の消費税率10%への引き上げに伴う経済対策として、キャッシュレス決済を利用した際に2~5%のポイント還元を行うなど、国民に対してもキャッシュレス化を促す政策を打ち出した。
この時、ポイント還元支援事業の補助金事務局業務を受託したのは、先の「キャッシュレス推進協議会」だ。この構図は、新型コロナウイルス対策で持続化給付金の事業を受託した「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」と同じだ。
その上、現在もマイナンバーカードを使って申し込んだキャッシュレス決済サービスには、利用額の25%分のポイントが還元される「マイナポイント」事業が行われており、政府によるキャッシュレス化の推進は続いている。
こうした政府の政策に対して、「スマホ決済などキャッシュレス化関連サービスが遅れていたNTTドコモがセキュリティ軽視に陥った可能性がある」(同)という。
ドコモ口座など電子決済サービスは、「熾烈な顧客獲得競争が続いているが、口座開設の手続きが面倒臭いと顧客が敬遠して、口座開設に結び付かない。口座獲得には手続きが簡単なことが大きなアドバンテージになることが、セキュリティ軽視につながった可能性がある」(同)という。
結局、政府が急速にキャッシュレス化を推し進めるにあたって、サービス提供企業のセキュリティに対する基準が義務化を進めなかったことが、今回の電子決済サービスを巡る不正利用を引き起こす遠因となった可能性がある。今回の事件は安倍政権による“負の置き土産”とでも言うべきだろうか。
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