菅新総理「デジタル庁」創設に迷走する霞ヶ関 もう一つの財務省か――?
#政治 #総理大臣 #財務省 #デジタルトランスフォーメーション
自民党総裁選に決定した菅義偉官房長官が9月5日、日本経済新聞のインタビューで言及した「デジタル庁創設」をめぐり霞ヶ関では早くも空中戦が繰り広げられているという。
この発言についてどのような反応が挙がっているのか、官僚たちに胸の内を聞いた。
デジタル庁は「もう一つの財務省」
まず、国のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の旗振り役を自認する経済産業省では今回の発言をどのように捉えているのか。関係者はこう口を開く。
「経済産業省は2018年に、『DXレポート―ITシステム“2025年の崖”の克服とDXの本格的な展開―』を発表しました。ざっくりと中身を説明すると、今のように政府や企業、業界でバラバラにシステムを構築していると、DXが実現できないばかりか経済的損失も大きいので、統一的なデジタルインフラを整備しようということです。
イメージは道路です。日本中に張り巡らされた道路は道幅や信号、標識、制限速度など共通の規則・規格ですよね。だから、誰がどこに行っても安全に通行できる。それと同じことをデジタル領域でも実現しようということです」(経済産業省関係者)
菅官房長官が述べたデジタル庁創設の目的は、新型コロナウイルスへの対応で遅れが明らかになったデジタル行政を加速すること。一見すればこの政策に正面から異議を唱える国民は、いないのではないか?
「ところが、霞ヶ関では“総論賛成各論反対”の雰囲気です。日本のすべての役所、企業、そして国民が直接利用するデジタルインフラを所管するわけですから、その権限は絶大です。現在、国のシステムは各省庁が独自のシステムを構築していますが、今後は共通プラットフォーム化が推進されるでしょう。
例えばマイナンバーカードと健康保険証、運転免許証などを一体化させようという動きがありますが、マイナンバーカードは総務省、健康保険証は厚生労働省、運転免許証は警察庁と所管が分かれています。まずここで、どの役所が一体化されたシステムを主管するのかという問題が起きます。次にシステムを実際に設計・運用するのはデジタル庁になりますから、主管官庁であってもデジタル庁から『技術や予算的に無理』と言われると何もできなくなります。
つまり、デジタル庁創設とは、査定庁として絶大な権限を握る財務省がもう一つできるということです。全国に税務システムを張り巡らす財務省もいずれはデジタル庁に首根っこを抑えられるでしょう」(同)
行政組織や情報通信など国の基本的仕組みを担当する総務大臣出身の菅氏が、「もう一つの財務省」(前出の経済産業省関係者)ともいわれるデジタル庁創設をぶち上げたのだから、官僚の胸中は穏やかではない。
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