『5時に夢中!』カブトムシの「生命の尊い営み」とテレビの“予定調和”
#5時に夢中! #マツコ・デラックス
テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(8月30~9月5日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。
若林史江「マツコさんちょっといい? カブトムシがね、始めちゃってるの」
予定調和をぶっ壊す。そんな発言を聞くと、冷めてしまうことがある。「予定調和をぶっ壊す」と言うことを期待されている人が、「予定調和をぶっ壊す」と言っても、それは予定調和だ。カンニング竹山は周囲がキレてほしいときにキレるところに安心感がある。坂上忍が再ブレイクしたときに面白がってしまった過去を、私はいまでも罪の意識と共に思い返す。
そんな中、31日の『5時に夢中!』(TOKYO MX)の展開が面白かった。同番組はこのコロナ禍で、コメンテーターのリモート出演が続いている。スタジオの狭さゆえに”3密”回避はなかなか難しいのだろう。ただ、マツコ・デラックスと株式トレーダーの若林史江がコメンテーターを務める月曜だけは、リモートではなく電話出演。マツコがリモートを断っているようだ。いわく、「(電話のほうが)潔くていい気がする」(5月26日の放送での発言)。
で、電話出演が続くマツコと若林なのだけれど、スタジオにはリモートに付きもののモニターではなく、2人の写真パネルが置かれている。最初は普通のパネルだった。が、日が経つにつれ若林のパネルがアーティスティックになったり、マツコが極小パネルになったりなど、スタッフによるちょっとした工夫が毎週加えられてきた。
この日、テーブルの上に用意されていたのは小さな樹が2本。それにマツコと若林のパネルが貼り付けてあった。同時にしがみついていたのが何匹ものカブトムシ。最初、若林が「このフィギュアよく出来てますね」と勘違いしていたけれど、もちろん本物だ。
そんな状況下でも番組は通常通りに進行する。が、マツコが話し始めるとカブトムシの様子に変化が。MCのふかわりょうがチラチラとカブトムシのほうに視線を送る。マツコの話に若林が割って入る。
「マツコさんちょっといい? カブトムシがね、始めちゃってるの」
画面に大写しになったのはカブトムシの交尾の様子だ。だが、スタジオで進行を任された2人は「これは決して悪いことではございませんので」(ふかわ)、「生命の尊い営みですよね」(大橋未歩)と動じることはない。さらに家でカブトムシを飼っていたという若林が、「この時期の女の子はやりたいと思ってないんですよ。オスがね、しつこいんですよ」と、メスカブトムシの心情を解説するのだった。
また、いつものようにマツコがスポーツ新聞の記事にコメントをしていると、カブトムシが止まり木からブーンと飛び立った。すると、小さな虫取り網を手にしたふかわが見事な手さばきで中空のカブトムシを冷静にキャッチし、網の中で動き回るのを手で制しながら、いつもどおりに進行を続けるのだった。
その後も生放送中、テーブルの上で交尾を繰り返し、スタジオを次々と飛び回るカブトムシたち。出演者たちの”予定調和”ではない発言が注目される『5時に夢中!』だけれど、これまでのどの出演者よりも自由だったのではないか。永遠のグラドル・岡本夏生よりも。
虫取り網も準備されていたのだから、いろいろ想定はされていたのだろう。けれど放送されたカブトムシたちの学級崩壊状態は、もちろん面白がられてはいたものの、緊急事態!みたいな感じでことさら大きく取り上げられるわけでもない。予定調和が壊れる状況を、予定調和へと淡々と回収していくふかわや大橋の手さばきに笑った。
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