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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 授業オンライン化を迫られる学校教育の現場

コロナ禍で授業オンライン化を迫られる学校教育のいびつな現場

オンラインの広がりは新型コロナ以前から

――小1、中1、高1のように関係性をイチから作らないといけない場合、友達もできていない中、オンラインで『学び合い』はできますか?

西川 それはリアルでやったほうがいいに決まってるけれども、オンラインでもできます。子どもたちのLINEの使い方を見てください。我々が経験してきたリアルな人間関係とは別ですけれども、いろいろなやり方でのつながりを作っている。今では例えば東大理Iに入りたいという子たちはネットで同じような志望の子を見つけてつながり、入学前から友達になっています。年間のうち数回でもオフ会的に会うことができれば、安定した関係を結べると思いますよ。友達同士が一緒に勉強する環境は異学年だっていいんです。

 そもそも今の学校は、子どもたち同士が関わる時間が非常に少ない。わずかな休み時間と、あとは部活や学校行事くらいのものです。勉強している時間のほとんどは先生が一方的に話しているだけ。その程度の関係しかないのであれば、学外でも構わないからネットで友達を作って、お互いに教え合えるようになったほうがマシです。

 もちろん、本当に子どもたちが支え合って学び合っているのであれば、リアルのほうが勝ちます。でも、今の学校現場はそうなっていない。教師の仕事は教えるということに限りません。人と人とを結んだり、チームとしてファシリテートしたりするのは生の教師しかできない。子どもは動画の教師を信じることはできませんから。直接のやり取りを通じてしか「この人は本当に自分のことを考えてくれているんだ」と思うことはありません。

 ところが先ほども言ったように、そういう機能は逆説的にオンライン教育に特化した広域通信制のほうが提供できてしまっている。リアルで教えている先生は授業に部活にと忙しいから、十分にできないのです。

――今日お話を聞いていて、コロナで何か変わったというより、コロナの前から明らかだったことがより顕在化しているという印象を受けました。

西川 私が勤めている上越教育大学は教育系の学校ですが、それでも「教師にはならない」と決めている学生がいます。「ブラック労働はイヤだ」と。教師は今、勤務校を辞めており、広域通信制に移っていく教師も増えています。この流れが進行して、生徒の普通科離れ、ブラック労働による教師不足が深刻化していけば、「授業はオンラインのコンテンツをベースにして、教師は生でしかできないことに注力する」「部活は社会体育に移行して、先生は顧問を受け持たなくていいようにする」といったように、どこかのタイミングで公立の学校も劇的に転換せざるを得なくなるだろうというのが私の見立てです。すぐには変わりませんが、その転換点に向けてじわじわと先行事例が蓄積されていっている、というのがまさに今起こっていることです。

●プロフィール
西川純(にしかわ・じゅん)
1959年、東京生まれ。筑波大学教育研究科修了、博士(学校教育学)。都立高校教諭を経て、上越教育大学にて研究の道に進み、2002年より上越教育大学教職大学院教授。前・臨床教科教育学会会長。全国に『学び合い』を広めるため、講演や執筆活動を行っている。著書に『人生100年時代を生き抜く子を育てる! 個別最適化の教育』(学陽書房)など。

マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャーや出版産業、子どもの本について取材&調査して解説・分析。単著『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)など。「Yahoo!個人」「リアルサウンドブック」「現代ビジネス」「新文化」などに寄稿。単行本の聞き書き構成やコンサル業も。

いいだいちし

最終更新:2023/01/26 18:32
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