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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 授業オンライン化を迫られる学校教育の現場

コロナ禍で授業オンライン化を迫られる学校教育のいびつな現場

オンラインで子どもに「勉強の動機づけ」はできるか?

――GIGAスクール構想と並んで文科省が推進しようとしている「探究学習」はオンラインでサポートできますか?

西川 いや、これも同じで、大半の先生は探究学習自体やりたいと思っていませんからね。ましてや、デジタルツールを使って取り組みたいという先生はほんのわずかだと思いますよ。

――では、テストや入試のオンライン化は?

西川 こちらも変化しないでしょう。変化させたくないわけですから。コロナがはやる以前から、英語の民間試験活用にしたって文科省の改革は骨抜きにされましたよね。「センター試験」から試験制度の名前が変わっただけです。

――そうすると、良くも悪くも元に戻ってしまうし、進めようとしていた改革は頓挫するであろうということですね。今回のコロナ禍は日本の学校には不可逆な変化を起こさなかった?

西川 いえ、起こしていると思います。というのも、保護者のほうが変わっているからです。保護者自身がZoomやGoogle Meetなどを使う中で「こういうことか」とわかってきて、子どもの遠隔授業に対する抵抗感が薄れました。

 私が注目しているのは、広域通信制高校の動向です。4年前にN高等学校(学校法人角川ドワンゴ学園が運営する広域通信制高校)ができたときには入学者が1500人だったのが、今年の4月は1万5000人。これはコロナ騒ぎ前ですから、おそらくは来年、再来年はもっと増えるでしょう。コロナを受けてN高が1年間オンライン授業を無料開放しましたよね。ああいった優良なコンテンツがネットには膨大にあることに、少なくない人が気づいてしまいましたから。

 今後、学校の数は激減します。東洋大学(同大学院経済学研究科公民連携専攻長、同PPP研究センター長)の根本祐二先生のシミュレーションによると、島根県や和歌山県あたりだと約10分の1になる。ということは、単純計算で通学距離は3倍になります。僻地で3倍になったら、もはや通学できません。でも、オンライン教育が整えば、その問題を乗り越えることができる。そういう意味でも広域通信制は重要な選択肢になってきます。

――以前、教育系YouTuberについて取材したことがあるのですが、いくら良質な内容の教育系動画がネット上にあったとしても、それだけでは勉強の動機づけができない、だからリアルの人間のサポートが絶対に必要だ、というのが学校教師や塾・予備校講師の見解だったんですね。そこは授業のオンライン化でクリアできますか?

西川 広域通信制的な学校運営が一般化すれば、むしろ今より子どもひとりひとりに対するサポートは手厚くできますよ。

 なぜなら、例えばN高を見ると、授業を作る・行う人間と、教務を担当する担任とを分けています。教えることに特化した先生と、進路指導をしたり、コーチングをしたりすることに特化した先生がそれぞれいる。

 今年の春、N高から東大・京大に合格した生徒が出たことが話題になりましたが、それは当然です。通信制には特例が認められているからです。高校では、一般に1単位につき年間35回授業をやらなければならないと定められています。例えば数Iは、3単位だから105回やらないといけない。ところが、通信制の特例を使うと、理論上では3回で済みます。つまり、N高では文科省が「これをやりなさい」と定めていることは最小限にして、東大・京大志望の子たちは受験に関係する科目に特化して勉強したわけです。もちろん、そうでない子たち――例えばプログラミングに興味がある子たちに対してはプロのプログラマが教えるといった形で、多様な選択肢の中から希望する内容を選んで勉強ができる。教務の担当者はひとりひとりの志望を把握した上で、どんな授業を選択すればいいかといったことについてアドバイスする。教務の担当者は授業を受け持たないからこそ、じっくりひとりひとりをケアできる。こういうサポートは今、むしろリアルの学校の教師のほうができていません。忙しすぎるからです。

 それから、私は『学び合い』ということを提唱していて、子どもに勉強の動機づけができるのは本質的には教師ではないと言っています。仲間からの「勉強しようよ」という声のほうが影響力は大きい。教師の役割は、そういう集団を作ることです。

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