コロナ禍で授業オンライン化を迫られる学校教育のいびつな現場
#教育 #学校
コロナ禍で学校の授業のオンライン化が待ったなしの状況となる中、そのやり方を丁寧に解説した『子どもが「学び合う」オンライン授業!』(学陽書房)という書籍が出版された。同書の編著者で教育学者の西川純氏に、これからの学校教育はどう変わっていくべきか、学校現場は変われるのかについて訊いた。
文科省の「GIGAスクール構想」は馬鹿げている
――5月末に緊急事態宣言が解除されてから約3か月経ちますが、今、学校現場はどうなっていますか?
西川 必死にコロナ禍以前の状態に戻そうとしていますが、かなりいびつな状態です。例えば緊急事態宣言を解除した当初、ニュースでは「教壇の前に置いた手作りの透明な板で対策します」などと報道されました。だけど、子どもたちは休み時間になれば密接して話すに決まっていますから、教室で何をやってもしょうがない。結局は、マスクを付けて手洗いするという普通のインフルエンザ対策レベルのことしかできていません。
僕はコロナ対策として今すぐ全面的にオンライン授業に移行すべきだとは思っていないんです。ただ、命に関わる基礎疾患のある子どもと、そういう病気を持つ家族のいる子どもには提供しないといけない。それと、次にまた休校措置が取られたときに対応できないと本当に無様なことが起こる。今回は4月、5月に学校を休みにしたから、夏休みと冬休みを短くすることで調整できた。でも、12月か来年1月にパンデミックで休校せざるを得なくなったら、法律で定められている授業時間数の確保が不可能になる。おそらくは「やったことにする」しかなくなります。それでいいんですか、という話です。ですから、休校になっても十分に学びを提供する手段を用意しておかないといけないわけです。
――文科省はコロナ禍以前から「GIGAスクール構想」を打ち出して、先進国でもっとも遅れている教育のデジタル化にようやく取り組もうとしていたわけですよね。今回のコロナ禍でスピードは速まりそうですか?
西川 GIGAスクールは馬鹿げていると思います。周りを見てください。スマホに新しいアプリを次々に入れて「こんなことができる」と言っている人は少ないでしょう? ほとんどの人は、よく使っている特定のものしか使わない。それがマジョリティです。先生方も大半はコンピュータを使った勉強なんてやりたくないんですよ。そのため、タブレットを生徒ひとりにつき1台配ったところで変わりません。
さらに言うと、問題が起きたときに責任を取りたくない行政は「インターネットに接続できない高速ネットワーク」を用意するでしょう。そんなものに何の意味があります? 私なら「スマホを持ってきていいよ」と言うだけです。もっとも優れたICTの装置はタブレットやPCではありません。それらを使いこなしている友達です。みんながデジタルツールに堪能なわけではない。でも、誰か知っていて、その子に教えてもらえば、みんなが使えるようになる。
いまだに「Zoomはセキュリティの問題があるから使わせない」と言っている学校もありますが、厳密な意味でネットでセキュリティの問題は完全にクリアできるはずがない。ただ、個人情報をネットでやり取りしなければ重大な問題は起こりません。
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