豊川悦司、浅野忠信、ウディ・ハレルソンが競演 あの“破壊王”が描いた戦争絵巻『ミッドウェイ』
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なかったことにされた歴史的な大敗
ハリウッドで活躍するエメリッヒ監督は、ドイツ出身であり、米軍側に過度に加担することなく、日米双方の視点からミッドウェイ海戦を客観視して描いている。爆撃機による急降下爆撃など、CGを駆使して迫力ある戦闘シーンに仕上げているのも見どころだ。だが、ゲイであることをカミングアウトしているエメリッヒ監督はマッチョイズムをことさら煽るような演出は避け、米兵も日本兵もどちらも、愛する家族や仲間たちを守るため、愛する祖国を守るために捨て身になって戦う姿を描いている。
ミッドウェイ海戦の前、ドーリットル爆撃隊が帝都・東京を初空襲するシーンが描かれているが、この時のドーリットル隊のB25爆撃機は味方の空母には帰艦できず、日本占領下の中国大陸に不時着。多くが捕虜となって、処刑されている。「特攻」というと日本軍特有のものと思われがちだが、米軍も片道切符の特攻を仕掛けていたことが分かる。
ミッドウェイ海戦に敗れ、日本は主力空母を失い、零戦を乗りこなしていた熟練パイロットたちも失うことになった。日本が太平洋戦争に勝利する可能性は皆無となる。しかし、大日本本営は大敗したことは伏せ、米軍側に大打撃を与えたと発表する。新聞各社も大日本本営の発表をそのまま報じた。ミッドウェイの敗戦はなかったことになり、山本五十六が責任を問われることもなかったが、望んでいた米国との早期和睦の機会も訪れることはなかった。
やがて日本は、南方戦線での玉砕、東京大空襲、沖縄戦、広島と長崎への原爆投下……と破滅の道を転がり落ちることになる。エメリッヒ監督が映画化したのは「ミッドウェイ海戦」までで、その後の日本が壊滅していく様子までは追っていない。エメリッヒ監督がCGを使って描かずとも、そのことは日本人ならよく知っているからだろう。“破壊王”エメリッヒ監督が描きたかったものは、破壊の後に残されたものは何か、ということなのかもしれない。
『ミッドウェイ』
監督・製作/ローランド・エメリッヒ
出演/エド・スクライン、パトリック・ウィルソン、ルーク・エヴァンス、アーロン・エッカート、豊川悦司、浅野忠信、國村隼、マンディ・ムーア、デニス・クエイド、ウディ・ハレルソン
配給/キノフィルムズ 9月11日(金)より全国公開
Midway(c)2019 Midway Island Productions,LLC All Rights Reserved.
https://midway-movie.jp
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