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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.599

豊川悦司、浅野忠信、ウディ・ハレルソンが競演 あの“破壊王”が描いた戦争絵巻『ミッドウェイ』

軍神化されていた山本五十六が犯したミス

太平洋艦隊司令長官に任命されたニミッツ(ウディ・ハレルソン)。少将から大将へと昇進する。

 冷静に世界情勢を読み、その上で大胆な作戦を実行してみせた山本五十六は、日本だけでなく、海外でもリスペクトされている。軍神として生前から神格化されていた山本五十六だが、真珠湾攻撃に続いてミッドウェイ海戦でも同じ過ちを重ねてしまう。作戦の意図を、現場の指揮官たちにしっかりと浸透させずにいたことだ。そのため第一機動部隊を指揮する南雲中将は、取り返しのつかない致命傷を連合艦隊に与えてしまう。

 真珠湾攻撃は米軍の空母や燃料庫を叩くことが作戦の狙いだったが、戦艦4隻を沈めたことに南雲中将はすっかり満足していた。今回も山本五十六は米軍の空母艦隊を殲滅させることを主眼に考えていたが、南雲中将はミッドウェイ島の米軍基地攻略と対艦隊戦のどちらに比重を置くべきかを理解できずにいた。空母「飛龍」に乗る山口多聞少将(浅野忠信)は、そのことを懸念していたが、海軍内に亀裂が生じることを避けたい山本五十六はなぁなぁにしたままだった。コミュニケーションのあいまいさが、明暗を分けることになる。

 米軍艦隊との遭遇を考え、艦上機には対艦用の機雷を装備させていた南雲中将だが、ミッドウェイ島を攻略していた第一次攻撃隊が苦戦しているとの知らせを受け、全艦上機の機雷を外させ、対陸用の装備に変えさせる。その間、第一次攻撃隊が補給のために帰艦し、「赤城」の上空はガラ空きとなる。そのタイミングを狙って、米軍の急降下爆撃機が襲い掛かった。「赤城」の甲板上のあちこちには機雷が散らばっており、たちまち誘爆を引き起こしてしまう。「赤城」だけでなく、並んでいた「加賀」「蒼龍」も続けて炎上することになる。

 米軍側の主人公となる爆撃機パイロットのベスト大尉は、エンジントラブルや着陸脚の破損などあらゆる状況を想定して、着艦訓練を繰り返していた。これとは対照的に南雲中将の行動はマニュアルを重んじる典型的な日本人像として描かれている。模擬訓練では負けることのなかった南雲中将だが、不測の事態には対応することはできなかった。敵艦隊を発見した段階ですぐに艦上機を出撃させていれば戦況は変わった可能性が高いが、南雲中将は艦上機の装備を変えることにこだわり、ノーガード状態を招いてしまった。真珠湾の奇襲に成功して浮かれていた日本人は、逆に自分たちが奇襲されることは想定していなかったともいえる。

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