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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 『新聞記者』藤井道人監督インタビュー
映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』公開記念インタビュー

“日本アカデミー賞監督”藤井道人「清原果耶さんはシャーマンのよう」「コロナ禍の映画界を変える」

清原果耶主演作は、大人になることを肯定するドラマ

ーー外務省から内調に出向させられた杉原役の松坂桃李ですが、「脚本が面白かったので出演を決めた」と本人は語っていました。事務所の意向ではなく、俳優が自分の意思で社会派作品に出演を決めたことにも、保守性の強い日本の芸能界が少しずつ変わりつつあることを感じさせます。

藤井 僕もすっかり松坂桃李くんのファンになりましたね。事務所の顔色を気にして「こういう作品はちょっと」と断るケースが多いと思うんです。でも、桃李くんもシム・ウンギョンも、撮影時間の限られていた現場をぐいぐいと引っ張ってくれた。感謝しかないですね。杉原の妻役で本田翼さんにも出てもらいましたが、「出てもらえればいいけど、難しいだろう」と思っていたら本当に出てくれたのでびっくりしました。本田さんは美しすぎて、現場ではほとんど目を合わせることができませんでした(笑)。

ーーラストシーン、杉原が新聞記者役のシム・ウンギョンに向けた台詞が聞こえない演出も印象的でした。

藤井 口をパクパクさせるだけで、相手には伝わらない、という演出は僕が考えました。実際に杉原がしゃべっている台詞は、僕と桃李くんとで一緒に考えたものです。日本人が本気で悪いと思っていなくても責任を回避するために、すぐに口にしてしまう言葉です。映画の公開と参議院選挙が近かったこともあり、映画を観ていただいた人たちが「真実って何だろう」と考えてくれるような作品になればいいなという気持ちで撮ったんです。政権を批判した政治サスペンスと思われがちですが、集団に対して個はどうあるべきかを描いた普遍的なドラマとして楽しんでもらえるといいですね。

新作『宇宙でいちばんあかるい屋根』は「現実的なホームドラマ」

ーー9月4日から公開される新作『宇宙でいちばんあかるい屋根』は一転して、清原果耶と桃井かおりが共演したハートウォーミングなドラマです。

藤井 『新聞記者』のほうが先に公開されましたが、『デイアンドナイト』の後はこちらを先に準備していたんです。『デイアンドナイト』とその前に撮った『青の帰り道』(18)は、僕が20代の頃に感じていたモヤモヤ感、3.11後の溜まっていた澱みたいなものを吐き出した作品でした。『宇宙でいちばん』は14歳の少女を主人公にしたナイーブなドラマですが、一度こういう純粋な作品にも若いうちに向き合っておくべきだなと思い、撮ることにしたんです。

ーー原作小説はファンタジー要素がありますが、藤井監督が脚本も手掛けた映画は現実的な世界の出来事として落とし込んでいますね。主人公のつばめ(清原果耶)が出会う星ばあ(桃井かおり)の正体が、原作と映画では異なります。

藤井 原作小説とテーマは同じでも、パラレル的な別のものとして楽しめるようにと考えたんです。星ばあの正体は原作とは異なりますが、原作が伝えたかったことは星ばあの正体ではないと思うんです。いろんな人たちが寄り添い、支え合うことで人間は大人へと成長していく。大人になること、年齢を重ねることを肯定できる作品にしたかったんです。予告編などのイメージからファンタジーものと思われる人も多いかもしれませんが、僕としては現実的なホームドラマを描いたつもりです。

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