“日本アカデミー賞監督”藤井道人「清原果耶さんはシャーマンのよう」「コロナ禍の映画界を変える」
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年齢の離れた友達との映画づくり
ーー日本では非常に珍しいポリティカルサスペンスとなった『 新聞記者』ですが、 河村プロデューサーからのオファーを最初は断っていたと聞いてい ます。
藤井 2018年の11月に撮影した作品ですが、僕が撮った『デイアンドナイト』(18)を観たという河村プロデューサーからオファーされたのが7月でした。要は前任の監督が降板してしまい、脚本家も4人くらい交代し、誰もやり手がいない状況だったんです。それまでの僕は新聞もろくに読んだことがなかったので、『新聞記者』というタイトルの作品を「面白い。ぜひやりましょう」と引き受けるのは節操がないと断りました。でも、河村プロデューサーは引き下がらなかった。そんなに求められているということは、僕のことを信頼してくれているのかなと思い、受けることにしたんです。以来、河村プロデューサーとは年齢の離れた友達みたいな感覚でお付き合いさせてもらっています。2021年公開予定の『ヤクザと家族 The Family』も、僕と河村プロデューサーでゼロから企画しました。『新聞記者』は興収6億円のヒット作になりましたが、失敗する可能性もあった作品です。失敗したときは、僕のその後の面倒も看る、くらいの腹づもりで河村プロデューサーはいたようです。親心なんでしょうね。今でも毎日電話が掛かってきます。「こっちは忙しいんだよ」なんて思うこともありますけど(笑)。
ーー「年齢の離れた友達」っていいですね。政治に関心がなく、新聞も読まない若い世代が観たくなる映画にしてくれることを河村プロデューサーは望んでいた。
藤井 そうですね。クランクインまでの3~4カ月は『スラムダンク』の桜木状態でした。『スラムダンク』って、バスケ初心者の桜木がインターハイに出場するまでの4か月間ほどの話で、すごい短期間で桜木はバスケがうまくなるんです。僕も毎日のように記者や官僚関係者への取材を重ね、官邸や内閣府とはどういうものなのかを猛勉強しました。自分が20代の頃は避けていた政治の世界ですが、取材してみて分かりましたが、やはり高尚な世界なんです。若い頃は目の前の問題に向き合うだけで精一杯だったので、政治にまで関心を持つ余裕がなかったんです。
ーー劇中の杉原(松坂桃李)と同様に、藤井監督も子を持つ父親となり、政治も含めた実社会に向き合わざるを得ない世代となった。前川喜平文部科学事務次官が「出会い系パブ」に通っていることを読売新聞がスクープしましたが、この情報をリークしたのが「内閣情報調査室」ではないかと騒がれました。『新聞記者』はその「内調」に斬り込んだことでも話題に。
藤井 『官僚ポリス』(講談社)など「内調」に関する本が出版されるようになりましたが、映画の公開前には資料らしい資料はありませんでした。官僚関係の方たちに話を聞いても、「CIAのような諜報機関だ」という人もいれば、「そんな訳がない」と否定する人もいました。直接取材も申し込みましたが、もちろんダメでした。取材して分かったことは、各省から職員が集められた部署だということぐらいでした。実態が分からなかったので、逆に思い切ったエンターテイメント作にすることができたように思います。河村プロデューサーが、僕が撮る『新聞記者』と並行する形で、森達也監督のドキュメンタリー映画『i 新聞記者ドキュメント』(19)も進めていたので、官邸にリアルに斬り込むのはそちらに任せられたことも大きかったですね。
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