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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > Eテレ山田孝之の不穏な政治批判

Eテレ『植物に学ぶ生存戦略4』山田孝之が真顔で語る、シロツメクサと不穏な政治批判「ジャンベさんはとてつもなく偉い人です」

山田孝之「一部の人間だけが得をするまやかしの平和に気づき、NOを突きつけるのか」

 さて、今回の『植物に学ぶ生存政略』で取り上げられた植物は3つ。オオバコ、ハランときて、3つ目はシロツメクサである。

 山田はいつものように、シロツメクサを何かに例えて説明した。出てきたのは「ジャンベさん」なる人物のイラスト。スーツを着てネクタイを締めたおじさんだ。事情があって仮名らしい。なぜ「ジャンベさん」かというと、趣味がジャンベ(西アフリカ発祥の打楽器)だから。さらに山田によると「ジャンベさんはとてつもなく偉い人です」。イラストを確認すると、ジャンベさんの襟元には議員バッジのようなものが見える。

 山田は解説を始める。シロツメクサとジャンベさんは、大事な3種類の関係者がいるという点で共通しているのだという。

 第1に、仲間。シロツメクサはたくさんの小さな花が集まり、ひとつの花を形成している。一方、ジャンベさんも周りを同士で固めひとつの強い集団のように見せている(画面には新内閣発足時の写真のようなイラストが映る)。どちらも仲間と集団を作るという点で共通しているのだ。

 第2に、ウィンウィンのパートナー。シロツメクサは根に根粒菌を宿す。根粒菌は地中にある窒素を取り込み、シロツメクサが吸収しやすい窒素化合物に変える。その窒素化合物で成長したシロツメクサは、光合成で生成した糖を根粒菌に分け与える。この関係はまさにウィンウィン、「相利共生」と呼ばれてきたらしい。

「一方、ジャンベさんたちにとってウィンウィンのパートナーは、偉くない人びとです」

 山田によると、「偉くない人びと」は真面目に汗水たらして働き、お金をジャンベさんたちにたくさん渡している。ジャンベさんたちはそのお返しとして、「偉くない人びと」が幸せな暮らしができるようにお金を有効活用する。ここにもウィンウィンの関係がある。

 ただし、シロツメクサは窒素化合物をたくさん作る生産性の高い根粒菌に、より多くの糖を分配しているという。お返しの糖全体を減らすために、根粒菌の間に格差を作りコントロールしているらしいのだ。ということはジャンベさんも――。番組ではこの先の言及はなかったが、やはり類推してしまう。

 シロツメクサとジャンベさんに共通する大事な関係者。その第3は、外部の優秀な人材だ。シロツメクサの花は、ミツバチのように力の強い虫でないと蜜を得られないような構造をしている。遠くまで花粉を運んでくれるミツバチを、優秀な外部人材として囲っているのである。

 この点でもジャンベさんは似ている。ジャンベさんも、自分にとって有益となる外部の人材を寵愛し、「甘い蜜」をたくさん吸わせているという。

「こうしてシロツメクサもジャンベさんも、多くの仲間を取り込みながら、ひとつの巨大な帝国を作り上げていくのです」

 さて、説明を終えた山田は「最後に林田さんに言っておきたいことがあります」と、相変わらず淡々と語り始める。手には四葉のクローバー。見つけると幸せになるとされるその四葉のクローバーこそが、「シロツメクサ最大のしたたかな生存戦略」らしい。

「なんとなく幸せな気持ちにさせ、危機感や反発心を削いでしまう。平和な空気を醸し出し、人びとを思考停止にするんです」

 それは人びとにとって幸せなのか。林田アナがそう問いかけると、山田はひとまず「わかりません」と答えた後で、次のように続けた。

「ただこれだけははっきりと言えます。一部の人間だけが得をするまやかしの平和に気づき、NOを突きつけるのか。無知で無関心なまま、いいように飼い殺されるのか。どう生きるかは、自分で考えて、自分で決めるのです」

 ちょっと強引な感じもするけれど、その強引に教訓を垂れるさまがまた笑いを誘う。当然、政治風刺も含んでいるだろう。これまで繰り返し説明されてきたシロツメクサとジャンベさんの符合、そしてリアルとフェイクを架橋する山田の真顔が、最後のメッセージにも妙な説得力を生む。

 まさか放送から2日後、リアルに「とてつもなく偉い人」が辞任の意向を発表するとは、思わなかったけれど。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2021/09/21 11:02
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