Eテレ『植物に学ぶ生存戦略4』山田孝之が真顔で語る、シロツメクサと不穏な政治批判「ジャンベさんはとてつもなく偉い人です」
#政治 #テレビ #安倍晋三 #NHK #山田孝之
テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(8月23~29日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。
山田孝之「おじさんが出てきますので、このピコピコハンマーで叩いてください」
あの”怪番組”の続編が放送された。26日の『植物に学ぶ生存戦略4 話す人・山田孝之』(NHK Eテレ)。初回の放送が2018年9月で、そこから年に1~2回のペースで放送されてきた。今回が第4弾となる。
番組内容はタイトルの通り、人間の世界に転用できそうな生存戦略を植物の生態から学ぶ、というものだ。植物について解説する人、つまり「話す人」は俳優の山田孝之。「聞く人」は林田理沙アナウンサーが務める。30分ほどの番組だが、そのインパクトは毎回強い。
番組が始まると、ブルーの背景に番組タイトルが白い文字で書かれたシンプルな画面が数秒映る。同時に流れるシンセサイザーで演奏されたようなメロディが、ひと昔前の教養番組の印象をより強める。
すぐに画面がスタジオに切り替わると、林田アナが「こんばんは。植物に学ぶ生存戦略」と挨拶を簡単に済ませ、「山田さん、今回取り上げる植物はなんでしょうか」と問いかける。山田が映る。が、何も話さない。2人の前にはダンボールで作ったような、表面にモグラの絵が描かれた大きめの箱が置いてある。しばしの沈黙の後、林田アナにピコピコハンマーを差し出しながら山田が言う。
「穴からおじさんが出てきますので、このピコピコハンマーで叩いてください」
箱からは、おじさんのスキンヘッドがずっと出ている。その頭を山田の指示通り、もぐら叩きのように林田アナが叩き続ける。ただ、おじさんの頭はもぐら叩きのように出たり引っ込んだりせず、ずっと出っぱなし。叩かれるがままだ。
ここまで番組についての説明は特にない。番組は突如として始まり、1分ほどで謎の禿頭叩きが始まった。出演者の会話には大きな起伏がなく、淡々とセリフが読み上げられるように進行していく。林田アナには困惑の表情が時折見られるものの、山田は終始真顔。高嶋ちさ子がよくやる、今は面白いことをやっているのですよ、ここは笑うところですよということを示す”キョトン顔”ではなく、真顔。ツッコミがないまま奇妙な状況が続くそのさまは、”シュール”とも形容できるのだろう。
もちろん、ただトンチキな映像が続く番組ではない。ちゃんと教養も含まれている。無抵抗に頭を叩かれ続けるおじさんは、今回取り上げる1つ目の植物、オオバコを説明するために用意されたものだ。
雑草のひとつであるオオバコは、道の真ん中など人や動物に踏まれやすい場所にわざわざ生えている。なぜか。理由のひとつは、踏まれやすい場所にはライバルとなる草が少ないからだという。そんなオオバコの生態を、叩かれるがままのおじさんの姿に重ねているのだ。
その後も、オオバコとおじさんの類比は続く。踏まれても問題ないよう葉に柔軟性をもたせたオオバコに対し、おじさんも身体が柔らかい。根を四方八方にしっかりと張ったオオバコに対し、おじさんも家族を養うためいつリストラに遭うかわからない会社にしがみついている。踏んだ人や動物の足にくっつきやすいよう種の形状を変えたオオバコに対し、おじさんもこの日の収録のために髪を剃ってきた。その姿に家族は覚悟を感じ、父親を笑顔で送り出した――。
「家族って、いいですよね」
突如として始まったオオバコの説明は、そんな山田のひと言で、やはり突如として終わりを迎えるのだった。
ここまで約10分の映像だが、教養番組のパロディとしてトンチキな映像が淡々と続く状況に笑う。と同時に、教養番組のパロディのようでいながら、植物について確かに学べる構成になっているのも笑いを誘う。番組で流れる植物の映像は、このために時間をかけて撮影された貴重なものも多いという。『勇者ヨシヒコ』シリーズや『山田孝之の東京都北区赤羽』『山田孝之のカンヌ映画祭』(いずれもテレビ東京系)など、リアルとフィクションの境界を行き来する作品で主演を務めてきた山田の佇まいが、教養番組とそのパロディをシームレスに繋いでいるようにも見える。
多くの番組がひしめくテレビの中に、夜11時前後に30分だけひっそりと存在するこの”怪番組”。放送頻度が高いわけではないし、事前に目立ったPRが行われるわけでもない。放送を見ても大きな動きはない。けれど、この手の番組が好きな人は確実に見つけ、視聴し、SNSで好評価を拡散したりする。この番組自体が、目立たないけれどしたたかな植物の生存戦略を体現しているのかもしれない。
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