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日刊サイゾー トップ > エンタメ > テレビ  > テレビ朝日ご乱心! 安倍首相の大河ドラマ

安倍晋三首相の“華麗なる生い立ち” テレビ朝日が大河ドラマ仕立てで総括する異常さ

『サンデーLIVE!!』(テレビ朝日)より

 安倍首相辞任! ワイドショー関連はどこもコロナも吹っ飛ぶ大騒ぎだが、日曜朝5時半と早朝スタートの番組『サンデーLIVE!!』(テレビ朝日)はすごかった。「華麗なる一族からひも解く 安倍晋三 政界の頂点目指した原点と夢」と題して、その生い立ちからドキュメンタリー仕立てにして見せた。

 コーナーは2015年に米・議会で安倍首相が行ったスピーチから華々しく始まり、祖父・岸信介、父・安倍晋太郎の紹介。「華麗なる一族で育った安倍晋三総理は何を学び、何を成し遂げたのでしょうか」と、ドラマチックな音楽に乗せて始める。音楽効果ってすごいね。

 何やらもう、大スターの大河ドラマ的な、もしくは追悼番組かのようだが、あのぉ、辞任発表しただけで、まだ在任してるんですが。しかも王様とかではなく、公僕である一政治家なんですが。朝から番組に突っ込みたくなるが、正直この番組、誰に突っ込んだらいいのやら? なのだ。一応、“キャスター・東山紀之のニュース情報番組”ってことになっていて、ヒガシは常に真ん中にスタンディング。

 しかし、この華麗なるドキュメンタリーに先立つポスト安倍を占うコーナーでも、ゲストのスシローこと田崎史郎氏が政局内幕をべらべらしゃべる相手を務めるのは、テレビ朝日の小木逸平アナ。真ん中で所在なげにポツンのヒガシを見るのは辛い。

 華麗なるドキュメンタリーは、いかに安倍首相が政治家を目指したかを物語っていく。外務大臣になった父・晋太郎から強く勧められ、説得によって父の秘書官へ。共に世界を飛び回り、同時期に森永製菓の社長令嬢と結婚する。祖父と父が死に、後を継いで政界へ。たちまち官房副長官になって小泉純一郎首相(当時)の北朝鮮訪問に同行して小泉首相に大事な進言をしたとする。そして第一次安倍内閣……と、華麗なる物語が続く。

 VTRが終わり、東山は田崎史郎に「安倍総理は悲願だった憲法改正が成し遂げられなかったのは、何故だと思いますか?」と投げる。田崎は「野党の反発が強くて無理できなかった。安倍総理は理想を掲げた現実主義者なので、現実的な対応をして長期政権につながった」と言ったのだが、ヒガシ、そんな大きな球投げておいて「総理大臣は激務ですから。今はゆっくり休んでください」で締めてしまう。そこはもっと突っ込むとか、そもそもその球、なんで投げた、ヒガシよ。

 番組はその後、安倍総理をキーワードをもとにランキング形式で語っていくという、これまた思い出のヒット曲のような軽佻な切り口で総括する。いや、国民の生活や命がかかってるんですよ、政治って? と再び突っ込みたくなるが、ここでも進行はヒガシではなく、メーテレの濱田隼アナだからね、突っ込む的がはっきりしなくて。

 ランキングは東京オリンピック、外交などは褒めたたえ、桜を見る会など安倍首相にとって都合の悪いことは、そっくりさんを出して笑いで煙に巻く。森友~公文書改竄~加計問題はランキング3位、アベノマスクは1位に。

 ヒガシは「田崎さん、アベノマスクを思い出の声に多くの人があげてましたが?」と問うと、安倍友で知られる田崎は「小さいんじゃないか? と言われても、マスクを考案した秘書官には文句ひとつ言わず、逆に秘書官はますます働くようになりました」と美談で締めた。内輪には親切で、お友達内閣とも揶揄された安倍首相らしいエピソードともいえるが、むろんヒガシは特に何も言わず、メーテレ濱田アナが「総理おつかれさまですという労いの言葉が町では多かったのも印象的でした」と、最後までひたすら礼賛で締めくくった。

 ヒガシ、この番組やってて楽しいか? それがまず聞きたくなってしまった。

和田靜香(ライター)

1965年生まれ。静岡県出身。主に音楽と相撲のライターで貧困問題やフェミニズムにも関心が高い。著書に『スー女のみかた~相撲ってなんて面白い』(シンコーミュージック)、『音楽に恋をして♪評伝・湯川れい子』(朝日新聞出版)、『おでんの汁にウツを沈めて~44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)などがある。

わだしずか

最終更新:2020/08/30 23:36
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