有吉弘行のボンデージ姿と狼(犬)と大河と…テレビの“ドラマ性”を体験した日
#有吉弘行 #テレビ日記
テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(8月16~22日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。
かまいたち・濱家「あいつもうシュウヘイになってます。お前はシュウペイやぞ」
以前、EXITの兼近大樹がこんなことを言っていた。
「テレビって、俺すげぇドラマだと思ってて。長編のドラマなんすよ」
テレビがこの世に現れてから、画面の上ではずっとドラマが流れている。お笑い第7世代はその長編ドラマを盛り上げるための登場人物。だから、自分たちがこのままずっとテレビに残り続けるのはそのドラマをつまらなくしてしまう――。そう兼近は語った(『ワイドナショー』フジテレビ系、2020年7月26日)。
兼近のクレバーさと柔軟性と刹那を感じる話だけれど、なるほど、テレビはひと続きのドラマ。だからたとえば、井森美幸のオーディション時のダンスが、まるで伏線を回収するかのように時代を超えて面白動画として楽しまれたりする。
ドラマといえば、ドラマチックな展開で幕を閉じた2019年のM-1グランプリで3位となり、”人を傷つけない笑い”や”ノリツッコまないボケ”などと形容されブレイクしたぺこぱの2人のキャラクターが、最近不思議な軌跡を描いている。
ぺこぱも出演していた18日の『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)。ミルクボーイやかまいたち、すゑひろがりずなど共に去年のM-1決勝進出組が現状を語り合う企画だったのだけれど、そこでシュウペイが話し始めると有吉弘行は真っ先に彼の変化を指摘した。
「(M-1から)8か月でシュウペイはずいぶん落ち着いたしゃべりするようになったな」
確かに、低めの声でゆったりとトークする姿は以前とは違う気がする。例のシュウペイポーズも一度も出ない。いや、すでに去年のM-1終了直後の時点で、漫才とは異なり普通に話すシュウペイに先輩芸人からツッコミが入っていたような記憶もある。早くもキャラを脱ぐ彼の姿にスマートさを感じたことを覚えている。が、漫才と同じく”おバカ”や”無邪気”といったキャラクターも見せてきた彼を念頭に置くと、確かにギャップは大きい。
以前の『ロンハー』で、“シュウペイに妙な絡まれ方をされ困惑するかまいたちの濱家隆一”という流れで笑いを作っていた濱家も、自分に絡んでこないシュウペイの変わりようにかえって困惑した素振りでツッコミを入れる。
「どうしたんやシュウペイ。あいつもうシュウヘイになってます。お前はシュウペイやぞ」
他方の松陰寺太勇。『ロンハー』ではそのリアクションのぎこちなさがフィーチャーされてきた。シュウペイの上手いリアクションを真似しようとする姿が、さらにぎこちなさを生んでいた。松陰寺はこのミスを振り返り、「今後は本当に思ったことを言う」と決意を新たにした。
「上手くならないんですよね、リアクションって。だから出来ないものはやらないと思って」
で、その松陰寺流のリアクションは、『ロンハー』に先立つ16日の『お笑いG7サミット』(日本テレビ系)ですでに披露されていた。
松陰寺は同番組で語る。自分は絶叫マシンにもバンジージャンプにもこれまで恐怖を感じたことがない。そんな彼がカースタントやタライ落とし、箱の中身はなんでしょうなどに挑むのだが、『ロンハー』と同じく派手なリアクションを見せるシュウペイとは対照的に、松陰寺は笑顔を浮かべながら高速で走るカースタントの車に乗り、箱の中のヘビを平気で触り、タライを自分の頭に落として笑ったりしていた。
番組が彼につけた名前は「サイコパス松陰寺」。等身大でリアクションをすると語った彼が探り当てたのは、これまでのリアクション芸にあまり類例のない、リアクション×猟奇性の組み合わせだった。かつて、ほっしゃん。(現・星田英利)が頭に爪楊枝を刺して平然としているみたいなことをしていて、猟奇性という意味では近いかもしれないけれど、それよりはポップだ。なにより、自身が乗る車のスタントが失敗して高笑いする松陰寺は、なんだか活き活きとしていて面白い。
もともと現在の漫才の形にたどり着くまでに、時事漫才、ボーイズラブ漫才、ヒップホップ漫才など芸風を大きく変えてきたというぺこぱ。ボケとツッコミが逆の時期もあったようだ。そして、苦節の時期を経てようやく2019年のM-1でブレイクするが、その後も彼らはテレビでの出演を重ねる中でキャラクターを大胆に変化させている。
彼らはこれからどんな軌跡を歩むのか。なるほど、ここにも戦略と人間味と関係性が交錯するドラマがある。
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