大河ドラマ『麒麟がくる』登場人物の所作が“韓流ドラマ”みたい? “座り方”の歴史的背景を紐解く
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大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)の放送が、新型コロナウイルスの影響で中断を余儀なくされている。放送再開が待ち遠しいが、この空白の時期を使って大河ドラマについてより理解を深めてみるというのはいかがだろうか? 今回は、歴史エッセイストの堀江宏樹氏が「座り姿勢問題」について解説する──。前回はコチラ
今年の大河ドラマ『麒麟がくる』の総集編を見ていて、感じてしまった衝撃のひとつが、映像の妙なカラフルさ。しかし一番大きな違和感といえば、女性キャラクターの「立膝座り(たてひざずわり)」の問題でした。
明智の母・牧(石川さゆりさん)や、帰蝶(川口春奈さん)など高貴な女性たちが、みんな一様に立膝座りで座っているため、「まるで韓流ドラマみたい!」との指摘もネット上で散見されたものです。
総集編第1回ではあまり出てこなかったのですが、第2回になると出てくる出てくる……。
ただ、結論からいうと、これについては歴史考証的には「アリ」な範囲です。
有名どころでいうと、秀吉の正室こと北政所(きたのまんどころ)だった「おね」が出家、高台院と名乗っていた時代の肖像画などを見ると、彼女も立膝座りで描かれていますからね。立膝座りは、肖像画として残されても恥ずかしくはない座り方だったということです。
────が、今回の「大河ドラマ」の立膝座り猛プッシュには、多少の違和感を禁じえません。
というのも、あれはあくまで私室などでのリラックスした状態の座り方です。もっというと、目下の者たちに囲まれている時などの座り方でもあります。
総集編第1回では、夫・土岐頼純(矢野聖人さん)を、”マムシ”と呼ばれる父・斎藤道三(本木雅弘さん)の前に残して「この人大丈夫かしら……」といった雰囲気で、帰蝶は不安げに立ち去っていましたね。この時も帰蝶は立膝座りでした。
しかし、立膝座りは、夫や父親を目の前にしたとき、そして緊迫したときの座り方ではなさそうです……(ちなみにこういうときは、正座をしているのが”正しい”はず)。歴史好きの方なら、こういう細かい演出も気になったりするのではないでしょうか。
「座り方」の歴史を紐解くと、男女ともに、「正座」が礼儀正しい座り方ということになったのは、江戸時代になってから。
ちなみに少し見ただけでは、あぐらをかいているように思える座り方も劇中には登場します。あの明智ら武士がドッカとあぐらをかいたようにして床に座る方法は「楽座(らくざ)」と呼ばれ、あれはあれで礼儀正しい座り方なのでした。
まぁ、ホントの楽座は足の裏と裏をぴったりつけて座るので、まったくラクな座り方ではありません。股関節が柔軟でないと、むしろ苦しい座り方になりますね。
ですからドラマで再現されているのは正確には楽座のバリエーションともいうべき座り方ですが、相手に対して失礼とか間違いというわけではありません。
「座り方なんて些細な問題じゃないか」と思う方もいるかもしれませんが、実は案外大事なポイントだったりするのです。なぜなら、座り姿勢に立場や身分がモロに出ますからね。
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