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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 『僕は猟師になった』レビュー
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.597

京都の山で野生動物を狩る男のドキュメンタリー 銃は使わない、わな猟生活『僕は猟師になった』

動物の命が消える瞬間を共有するカメラ

わな猟も狩猟免許が必要で、狩猟期間を守らなくてはいけない。わなのサイズは12センチ以下と決まっている。

 大学時代から猟を始め、すでに20年近くになる千松さんだが、今も動物たちには真剣に向き合い続けている。自然に対して畏敬の念を抱かせる狩猟生活は、飽きることがないという。

 本作を撮ったのは、NHK京都局に勤務する川原愛子ディレクター。テレビ取材はなかなか受けないと言われていた千松さんから、取材を申し込んだ際に出された条件は以下の一点だった。

「動物の命が消える数分間、僕は動物と二人きりで過ごします。猟師になって17年になりますが、慣れない時間です。その時間を共有する覚悟はありますか?」

 自分が生きるために、自分の手で動物を捕らえ、その命を喰らう。獲物をナイフで仕留める千松さんの表情を、カメラは映し出す。断末魔をあげる獲物から、溢れ出す赤い血。厳粛な時間が森の中を流れていく。

 足の怪我が癒えた千松さんは、小学5年生になった長男を連れて、山をめぐるようになる。猟をする年齢にはまだ早いが、どれが獣道なのかなど森の成り立ちを、千松さんは我が子に教えながらゆっくりと歩いていく。5年後、10年後、この家族の暮らしはどうなっているのだろうか。いつか続編が作られることがあれば、またぜひ観てみたいと思う。

『僕は猟師になった』
語り/池松壮亮 監督/川原愛子 出演/千松信也
配給/リトルモア、マジックアワー 8月22日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
https://www.magichour.co.jp/ryoushi/

 

最終更新:2020/08/21 09:00
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