家族より小さな社会単位としてのバディムービー 愛すべき相棒『ブックスマート』『ジェクシー』
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背中を押してくれる相棒さえいれば、人生はバラ色
人工知能に恋する男性をホアキン・フェニックスが熱演した『her 世界でひとつの彼女』(13)では一夜限りのデート相手、クリント・イーストウッド監督の実録映画『リチャード・ジュエル』(19)では爆弾を見つけた警備員に爆弾魔の汚名を被せてしまう女性記者など、クセのある美女役を演じることの多い女優オリヴィア・ワイルドの初監督作。爆笑バディムービー『俺たちステップブラザーズ 義兄弟』(08)などで知られる、アダム・マッケイ監督&主演俳優ウィル・フェレルのコンビが製作総指揮を務めている。
オリヴィア監督は、10代の女の子の心理を、コミカルかつナイーブに描いてみせる。丁寧に描いている分、ひとつひとつのエピソードが細切れになっており、物語全体にグルーヴ感が生じていないのが難点か。その点さえ気にしなければ、往年の青春コメディ映画『グローイング・アップ』(78)の現代的フェミニズム版として楽しめる。オリヴィア監督いわく「大人は高校生の悩みなんてかわいいと思うけど、彼らにとっては戦争。ガールズムービーではなく、アクション映画や戦争映画のようなバディムービーが撮りたかった」そうだ。
もうひとつ、現代的なバディムービーとして取り上げたいのが『ジェクシー! スマホを変えただけなのに』だ。大ヒットコメディ『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(09)の脚本家コンビ、ジョン・ルーカスとスコット・ムーアの脚本&監督作となっている。
こちらの主人公は、情報サイト会社に勤める小太りな男性フィル(アダム・デイヴァイン)。恋人はおらず、職場にも友達のいないフィルは冴えない毎日を送っていたが、新しく買い換えたスマホにライフコーチ機能「ジェクシー」が搭載されていたことから、生活が一変することに。スパイク・ジョーンズ監督のシリアスドラマ『her 世界でひとつの彼女』のコメディ版といった趣きだ。
女性の音声でしゃべるジェクシーは、超おせっかいな性格。いつも高カロリーなデリバリーばかり注文するフィルの健康を考え、問答無用で注文内容を変更してしまう。街でサイクルショップを開く美女ケイト(アレクサンドラ・シップ)のことが気になるフィルが、ネット上で彼女の情報を調べていると、勝手に彼女に電話を掛けてしまう。おせっかいにもほどがあるジェクシーだが、ジェクシーが巻き起こすトラブルに対処していくうちに、内向的だったフィルの生活は徐々に変化していく。
ジェクシーのアドバイスは、いつも正しいとは限らない。ジェクシーはきっかけを与えてくれるだけに過ぎない。そのきっかけを、有意義なものにできるかどうかは本人次第だった。現実世界でいくら努力しても無駄、それよりかはSNS上でリア充のふりをしていたほうが楽と考えていたフィルは、ジェクシーに背中を押されることで、現実世界の楽しみ方を覚えるようになっていく。
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