【“防災のカリスマ”蝶野正洋・短期集中講座第3回】コロナとマスクと熱中症のトリプルピンチ! 救急車を呼ぶべきか迷ったら…迷わず「#7119」!?
#プロレス #蝶野正洋 #新型コロナウイルス #防災
プロレス界を代表する悪役(ヒール)として活躍、現在はアパレルブランド「ARISTRIST(アリストトリスト)」を経営しつつ、年末にはテレビで熱きビンタを放つなど活躍中の“黒のカリスマ”・蝶野正洋さん。近年は、防災や救命における“防災のカリスマ”としても、全国各地でバリバリ活動を行っている。
そこで今回、日刊サイゾーが蝶野さんを特別講師としてお招きし、防災への意識改革のための短期集中特別講座を開講!「withコロナ」時代の防災・救命について、語り尽くしてもらった。
蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)
1984年、新日本プロレス入門。同年10月5日、越谷市民体育館における武藤敬司戦でデビュー。 2010年2月に新日本プロレスを離れてフリーとなったが、いまなお絶対的な存在感を放ち、黒のカリスマとして、プロレス界に君臨し続けている。現在はリング以外にも活動の幅を広げ、日本テレビ系『ガキの使い大晦日スペシャル』 のレギュラーを始めとするTVやイベント、講演に出演するなど多方面で活躍。 近年は、「AED救急救命」ならびに「地域防災」の啓発活動に力を入れており、2014年7月には(一社かこニューワールドアワーズスポーツ救命協会を設立。(公財)日本消防協会の「消防応援団」、(公財)日本AED財団の「AED大使」などを務める。YouTube:【蝶野チャンネル】CHONO Network/ARISTRIST・蝶野正洋公式Twitter:@managem87085834
■第1回「もう、国は守ってくれない」
■第2回「withコロナ時代」のニュー避難スタイル!
第3回 マウス・トゥ・マウスはもう古い!
ーー蝶野さんは、AED(自動体外式除細動器)の普及や講習にも力を入れていますよね。ただ、withコロナ時代には感染リスクも考慮しなくちゃいけないし、要救護の人を助けるという行為も一筋縄ではいかない気が……。
蝶野正洋(以下、蝶野):コロナの感染予防として、AEDをやる側も受ける側も、お互いにマスクをつけて、飛沫感染を防ぐことが望ましいね。倒れている人がマスクをしていない場合は、口や鼻にタオルなどをかぶせて、室内なら換気をよくしてから対応してほしい。
東京消防庁の公式サイトでは、コロナの感染を防止しながら心肺蘇生する方法を紹介している。具体的に言えば、これまでAEDがないときの心肺蘇生方法は、胸骨圧迫から人工呼吸という手順だったけど、いまは感染予防のためにマウス・トゥ・マウスの人工呼吸は行わないようにと言われている。
ーーコロナは怖いですけど、救急の人命を優先したいですよね。
蝶野:基本的には、心肺停止で亡くなる率は自宅のほうが高いから、路上で誰かが倒れる場面に出くわすことってそんなにないし、AEDを使う場面もそうそうないわけだよ。ただ、2017年のデータでは一般市民がAEDを使った事例が1260件あったそうだから、コロナ時代の新たな人命救助方法を知っておいても損はないよね。
あと、いまの時期に遭遇する場面が増えそうなのは、熱中症だね。
ーー今年は暑くてもマスクを着用することが多いですから、熱中症で倒れてしまう方も増えそうです。
蝶野:これはまだガイドラインが出てないからなんとも言えないけど、熱中症で倒れた人を介抱するときは、相手のマスクは外してあげてもいいと思う。その代わり、自分は必ずマスクをつけていること。そして、「大丈夫ですか」と声をかけて、容体を確認する。それから涼しい場所に避難させて体を冷やして、水を飲ませるなどの対処をする。
ただ、意識がないような重度の熱中症の場合は別として、緊急性が高くない場合は、やみくもに救急車を呼ぶ前に「#7119」というダイヤルを思い出してほしいんだよ。
ーー「#7119」……初めて聞きました。それってなんですか?
蝶野:「#7119」は各自治体が運営する「救急安心センター事業」の番号で、医師や相談員に電話口で病気やケガの状態を伝えると、救急車を呼んだほうがいいか、どの病院に行けばいいかなどを案内してくれるもの。
緊急の場合は、すぐに119番。これは今まで通りだね。ただ、持病があってちょっと気分が悪いとか、子供が夜に熱を出してしまったとか、救急車を呼ぶかどうか迷う場合には「#7119」に電話して判断を仰ぐことが好ましい。これは、なるべく救急車を使わないようにするためなんだよ。
ーーエッ! 救急車を呼んじゃダメなんですか?
蝶野:ダメじゃないんだけど、救急車の数が足りていないんだ。例えば、俺がいま住んでる地域は人口20万人くらいの都市なんだけど、救急車は3台しかない。その3台が1日に何往復も稼働して、ひっきりなしに走り回ってる。だから、本当に命の危険にさらされている人を緊急搬送してもらうためには、救急車を適正利用しなきゃならない。
あと、実際に救急車が出てから現場に着くまでの全国平均が8.6分。現場に着いてから病院へ搬送するのに、約40分かかってる。だから、場合によっては救急車を待つよりも、近くの病院までタクシーで行ったほうが早いこともあるんだ。
ーー救急車に乗っても、病院から受け入れを拒否される「たらい回し」も増えてるって聞きます。
蝶野:ただ、これは病院側だけが悪いんじゃなくて、医療従事者の労働環境の問題にも一因があるんだよ。総合病院なんかでも、全科診療できるお医者さんが24時間体制で待機している、という時代ではなくなってきている。ひとつの病院や地域だけではカバーしきれないから、もっと広域で融通し合っていくという体制になっているんだ。これは、前回(※第1回記事にリンク)の消防や警察の話にも通ずるね。そんなとき、まずはじめに「#7119」に状況を相談すれば、そのときに適切な先生のいる病院も教えてくれる。
ーーこれを知っているのと知らないのとでは、自分や大切な人の命にかかわってくるかもしれませんね……。
蝶野:それこそが、俺がやってる「啓発」という活動なんだよ。災害で「自助」を全うするためにも、まずは「自助」とは何なのかを知ることが大事。行政の人たちはスーパーエリートだから、ルールやシステムを作るのはプロなんだけど、それをみんなに広めることに関しては下手なところがあるね。
だからこそ、俺みたいな人間がメディアやイベントを通じて広めていくことが大事だと思ってる。まだ防災や救命についていろいろ知りたいという奴がいたら、俺を呼んでくれ。本やYouTubeチャンネルでも発信してるから、それも見てほしいね。
(取材・文=出洲待央)
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