千鳥・ノブの顔がやけにハマる、テレビの新しい角度と記憶の邂逅
#千鳥 #テレビ日記 #ノブ
麒麟・川島「あれ、風邪引いたときに見る夢ですね」
もうひとつ紹介したいアーカイブを利用した番組は、3日に放送された『クイズ!THE違和感』(TBS系)。千鳥がメインで番組を回すクイズ番組で、月曜のゴールデンタイムに月1ペースで放送されている。
この番組もまた、クイズ番組の皮を被った大喜利番組の側面がある。出てくる問題は他の番組でもよく見るタイプのものなのだけれど、芸人たちが次々とボケ回答を連ねる。たとえば「なぜ多くの学校の教室は左側が窓で右側が廊下なのか」という雑学系の問題に対し、麒麟の川島明が「校庭に犬が入ってきたとき気づきやすい」と答え、3時のヒロインの福田麻貴が「右側が窓だと風水的に死ぬ」と続けるといった具合だ。
そのほか、絶妙なつまらなさと気持ち悪さを醸し出している番組キャラクター・ちびノブ君とか、ゴールデンタイムにパチンコの演出を混ぜるクイズとか、「ここに全力をかけて生きてます」とクイズに必要以上のやる気を見せるトリンドル玲奈とか、見どころはいくつかある。
が、なんといっても「ノブ違和感」だろう。動画の中のある有名人の顔がノブに差し替えられています、さて誰でしょうというクイズなのだけれど、この差し替えが一般にディープフェイクと呼ばれる技術を使ったもの。単にノブの顔を貼りつけただけでなく、口や表情までノブの顔で動く。倫理的に危ういところがありそうな気もするけれど、差し替えられる両者からの了解が得られているということだろう。
これまで、ホームレスギャル漫画家として売り出していた浜田ブリトニーや、カリスマホストとしてタレント活動もしていた城咲仁、小学生演歌歌手としてデビューしたさくらまやなどの顔がノブに差し替えられてきた。3日の放送では、筋肉タレントの照英と、原宿のアパレルショップ店員からタレントに転身したぺえだった。ぺえを除けば、だいたい2000年代にメディアで注目された人たちだ。TBSの過去の懐かし映像が参照されているわけである。というか、こう並べてみるとすでに「懐かしタレント枠」に入っているぺえの一瞬のインパクトに改めて驚く。
彼らの顔がノブに差し替えられている面白さは表現しにくい。名前を忘れかけている人たちの顔にノブの顔がハマっていくのが、記憶に混乱をもたらしているのかもしれない。番組の公式ツイッターに動画がアップされているので実物を見るのが一番早いけれど、次の麒麟・川島のコメントでもその面白さが想像していただけるだろうか。
「さくらまやちゃんのが大好きで。あれ、風邪引いたときに見る夢ですね」
おそらく、ノブの顔も絶妙なのだろう。細い目と口元のうっすらとした笑顔が能面っぽい気もする。TBS系では6日にも『もしもAI動画大賞』という番組が放送されていて、そこでもディープフェイクの技術で菅野美穂の顔がフワちゃんに当てはめられていたり、南海キャンディーズ・山里亮太の顔を眞栄田郷敦に重ねていたりしたけれど、ノブのときのようなインパクトはなかった。少し面白かったのがEXITの兼近大樹や江頭2:50になっていたりした片岡愛之助。確かに片岡の顔はノブ度数が高い。
TBSに眠るアーカイブの顔をノブにしていく『クイズ!THE違和感』。記憶のアーカイブに心地よい混乱をもたらす違和感の中のフィット感。10年後ぐらいに、古市憲寿の顔がノブになっているのを見てみたい。
最後に、デヴィ夫人について。この番組では、芸人だけでなくときにゲストの俳優やアイドルもボケ回答に走る。そんな中、夫人は少なくとも自分からは一切ボケない。クイズに真剣に取り組み、間違えるとちゃんと悔しがる。正確にいえば、間違えても平気な素振りを見せているのだけれど、どう見ても悔しがっている。そのさまや、司会の千鳥・ノブが夫人におべっかを使う流れが笑いを誘う。
この番組を大喜利番組ではなくゴールデンタイムのクイズ番組に引き留めているのは、夫人の存在だろう。私はこの番組で初めて、バラエティにおけるデヴィ夫人の役割についてちゃんと理解したかもしれない。
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