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「スピード出しすぎちゃった」で2名死亡の凄惨な交通事故、報道メディアがわざわざ「ポルシェ」と書いた理由

「スピード出しすぎちゃった」で2名死亡の凄惨な交通事故、報道メディアがわざわざ「ポルシェ」と書いた理由の画像1
Getty Imagesより

 貧乏人のやっかみなのか、はたまた“マスゴミ”の印象操作なのか──。交通死亡事故の報道により、波紋が広がっている。

 先日の日曜日、快適なドライブが楽しめることで知られる首都高速湾岸線で、乗用車同士がぶつかる事故が発生し、湾岸線は約8時間にわたって通行止めとなった。70歳と63歳の夫婦が死亡する悲惨な事故だったが、ネットで話題になったのが、事故を報じるニュースのタイトルだ。大手紙を比較すると、

 

  • 「首都高でポルシェに追突され、夫婦死亡…かなりの速度で走行か」(読売新聞)
  • 「首都高で追突2人死亡 容疑でポルシェ運転の男逮捕」(産経新聞)
  • 「川崎・首都高2人死亡 現場ブレーキ痕なし ポルシェ、追い越そうと追突か」(毎日新聞)
  • 「首都高で追突され2人死亡 ポルシェ運転の男逮捕」(日本経済新聞) 

 

 と、実に4紙が「ポルシェ」を名指ししており、テレビ局も、

 

  • 「ポルシェ追突、夫婦死亡 妻は衝撃で車外に」(日本テレビ)
  • 「『とばし過ぎた』ポルシェ事故 追突された車の夫婦死亡」(フジ)
  • 「『出しすぎちゃった』 ポルシェが追突か 2人死亡」(テレビ朝日)

 

 このように、のきなみ「ポルシェ」という文字が登場。NHKのニュースにも見出しにこそ「ポルシェ」という単語は入っていないが、文中には「ポルシェ」という単語が登場する。

 2人が亡くなる事故を起こしながら「出しすぎちゃった」とは、怒りを禁じ得ないが、気になるのは「ポルシェ」とわざわざ書かれた理由だ。

 これについては、冒険家の野口健氏がツイッターで、「何故にポルシェだけわざわざメーカーが報じられるのか」「一々、車のメーカーまで報じる必要があるのかな?」とつづり、1000件以上の「いいね!」が寄せられていたが、なぜマスコミはわざわざ「ポルシェ」という単語を入れたかったのか?

「一言でいえば、“そこにニュースバリューがあるから”です。事件や事故報道で重要となるのは、容疑者のバックボーン。事件報道ではしばしば、『教師』『医師』『弁護士』『大学教授』『消防士』『警察官』といった肩書、ないしは『無職の男』『暴力団○○組の…』といった単語が登場します。これらは、容疑者がどんな人物かを読み解くキーワードであり、多くの人が関心を持つことなのです。

 今回の事故の場合、ポルシェは超高級車で、それに乗れる人間は自ずと限定されてきます。“社会的ステータスが高い人間でも事故を起こす”という一種のメッセージです」(ベテランのフリージャーナリスト)

 不謹慎ではあるが、「ポルシェ」という情報を報じるほうが読者や視聴者に響き、感情移入を誘うということか。捏造はありえないが、報じる側がそうした“ストーリー”を求めていることは間違いない。大手紙の30代記者はいう。

「例えば、災害で犠牲者が出た場合、“より悲劇的なキーワード”を我々は探します。亡くなった方について、『日頃からボランティアに勤しんでいた』『来月には結婚を控えていた』『夢は看護師になることだった』といったフレーズを見かけたことがあるはずです。そういったストーリーがあるほうが、より多くの人に読んでもらえるというのは実際ある。今回の事故の件で、ポルシェ愛好家が憤る気持ちもわかりますが、『ポルシェはそれだけ特別な車』ということなのです」(大手紙記者)

 容疑者のバックボーンを伝えるために「ポルシェ」というキーワードが必要だったということか。報道する側の“より広く伝えるため”の工夫は理解できるが、それがいきすぎてもまたバッシングを受けるだろう。そのバランスは実に難しい問題なのかもしれない。

日刊サイゾー

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最終更新:2020/08/05 08:00
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