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日刊サイゾー トップ > カルチャー  > コロナで需要拡大?“ママ活”インタビュー

コロナ禍でバイト切りされた男子大学生がハマる「ママ活」の実態! 実際に“ママ”になってみた

バイトに採用されない! コロナ禍の大学生の厳しい現実

 取材場所に指定した都内の喫茶店に現れたKさんは、物腰は柔らかく、服装もシンプルで今どきの大学生といった出で立ち。たとえば、ホストのような派手さは持ち合わせていない。

「本当はもっと髪形もきちんとしたかったけれど、今はお金がなくて、美容院に行くことができなくて……」と、Kさん。たしかにプロフィール写真に比べて髪の毛は長めだったが、こちらとしては気になるほどではない。普段から見た目には気を使っているのだろう。ダンスが得意で、一時期は芸能事務所に所属していたという。なるほど、ルックスがいいはずだ。

 取材ということで、こちらが一方的に質問する形になったが、ざっくばらんに話をしてくれた。Kさんは関東近郊の大学に通っており、居酒屋でアルバイトをしていたけれど、コロナの影響でシフトに入れなくなってしまったという。なお、一人暮らしなので家賃の捻出も目下の悩みなんだとか。

「3月くらいからバイト先の居酒屋も客足が減っていて、正社員や家族のいるパート社員にシフトも優先される方針になり、最近ついにクビになってしまって。コンビニやスーパーのバイトも応募したけど、“学生は採用しにくい”と言われ、10個くらい面接受けて全部落ちました。親もコロナの影響でボーナスがカットされたりして、前期の学費は収めたけど、後期はちょっとヤバいですね……。大学の学生給付金も申し込んでみましたが、ハネられてしまいました」(Kさん)

 実は居酒屋バイトの前にママ活の経験もあり、最初に始めたのは大学2年生の頃。ダンスとアルバイトの両立に悩んでいたところ、同じく芸能系の仕事をやっている友人から紹介されたのだそうだ。

「最初は、友達から教えてもらった六本木や新宿のバーで女性に声をかけて仲良くなったりしていました。それか専用アプリで知り合いますね。 ツイッターはいたずらや詐欺も多いから使わないです」

 なお、アプリに登録している女性は男性に比べて少ないので、詐欺や業者ではなさそうな女性には大抵「イイネ」をつけるという(そう、筆者が写真を厳選した意味はまったくなかったのだ!)。

 ママ活は、その語感のイメージよりもぜんぜん“健全”だとKさんは言う。「本当のお母さんみたいな感覚の人が多い」という。実際にKさんが経験談を話してくれる中で、相手の女性を「ママ」ではなく「お母さん」と呼んでいたのが印象に残った。いや、本当に実家の親を呼ぶ感覚の「お母さん」だったので……。とはいえ、金銭が発生しているので、完全に健全とはいえないわけだが。

「僕の場合は、決まった金額の提示はしてなくて、“女性が支払いたいときに支払う”という形でした。手持ちが少ないときは食事をおごってくれるだけ、多いときは5万とかでした。お金やモノを自分からねだったことは、ほとんどなかったですね。……誕生日のときくらいかな? そこは相手の判断に任せてました」

 毎回決まった金額をもらう“定額制”もあれば、彼の友人の中には月額数十万といった契約だったケースもあるそうだ。また、定期的にお小遣いをくれる「ママ」が2人くらいいれば、居酒屋などでアルバイトをするよりは生活がラクになるという。

 ひとつ気になるのが、特定のママ活相手との関係が継続する場合、セックスを求められることはないのだろうか?

「僕は一回もないです。僕らの需要ってそこじゃないんです。相手の話を聞いてあげるっていうか、癒してあげるというか……。女性用風俗ってあるじゃないですか、ヤリたい人はそっちに行くんですよ」

“ママ活”は至って健全? 女性は用途に合わせてサービスを選ぶ

 近年、男性が女性に性的なサービスを提供する「女性用風俗」は、男性のそれほどではないが、都市部を中心に広まっているという。女性の側も、ママ活、女性用風俗、あるいはホストクラブなど、自身の欲望の種類に合わせて課金先を選択しているのかもしれない(お金に余裕のある女性は、男性に比べて限られているとは思うが)。

 また、セックス ではなく「恋愛関係」を求められたりはしないのか聞いたところ、「それもなかったですね、それは“姉活”に近いんじゃないでしょうか」とのこと。「姉活」とはまた聞き慣れない言葉だ。

 Kさんいわく、ママ活よりも恋愛関係寄り(肉体関係もアリ)の場合はそう呼ばれるのだそう。ネットで検索してみたところ、「ママ活より年齢が若いだけ」「むしろ肉体関係がないのが姉活」など、定義は曖昧で、まだ浸透していない概念のようだ。

 では、どんな女性が“ママ”をやっているのだろうか。

「お金を持っているけど、使い所がない、忙しい女性が多いと思います。自分が出会ったことがある中で、一番インパクトがあったのは、アプリに“交通費出すから大阪まで来て”とメッセージを送ってきた人ですね。不動産経営者で忙しいからと、20分くらい話をするだけのために新幹線で大阪にいきましたね。それでお小遣いもらって帰りました(笑)。もしかしたら面接的な意味合いもあったのかもしれませんが……結局定期的に会うには至りませんでした」

 では、同世代ではない女性と交流することで、女性観に変化は起こるのだろうか。

「大学内の女子を見る目は変わりましたね、ちょっと子どもっぽいなあと感じるようになりました。この子たちはものを何も知らないんだ……って。今、彼女はいませんが、次に付き合うなら年上の人だと思いますね。お金目当てとかではなくて、人として経験を積んでいるから勉強になるし、色気があるというか魅力的じゃないですか」

 さらに自身の就職活動にも変化があったという。

「経営者の女性と話す機会も増えたので、勉強になります。そういう話って本来は有料のセミナーで聞くような話を、お金をいただきながら知ることができるのは、やっぱりメリットだと思います。そういう話を聴くと、刺激を受けるというか、就活も最初は安定志向だったけれど、ママの話を聞いているうちに、20代で経験を積んで、30代で起業したいと考えるようになりました」

 ゆくゆくは、大好きなダンスでもステージに立ちながら仕事を両立させていきたいと、将来の目標も語ってくれたKさん。彼の話から推察するに(すべて本当の話であることが前提だが)、 バイト切りに関しては休業や失業などで収入が減った人の家賃の支払いを、 行政が一部補助する「住居確保給付金」が適用されるかもしれないと感じたので、URLをアプリのメッセージ機能を使って送ったところ、 残念ながら「賃貸アパートの契約名義が親のため、適用されなかった」とのことだった。

 コロナ禍において、 行政のセーフティーネットも徐々に拡大されてはいるものの、 全員をフォローできるわけではないということを痛感した。

 ほかにもアプリを通してコンタクトをとった学生たちは、ほぼ全員がバイト切りに遭ったり、ブラックなインターンでやりがい搾取されていたりと、経済的な問題を口にしていた。皆、礼儀正しい“いい子”たちだったのだが、その“いい子”の背景にあるものを考えると、単純に「いい子でかわいいな~」とも思えず、暗澹たる気分になるのであった。

藤谷千明(ライター)

1981年生。V系好きのフリーライター。他にはギャル文化、ヤンキー文化、YouTuberなどが好き。共著に『すべての道はV系に通ず』など。

Twitter:@fjtn_c

ふじたにちあき

最終更新:2020/08/14 14:37
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