菅官房長官による突然の「ワーケーション」に日本中が大混乱! 唐突で無謀な傲慢政策の行く末
#菅官房長官 #ワーケーション
「ワーケーション」。菅義偉官房長官から発せられたこの聞きなれない単語は、「リゾート地や地方等の普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇取得等を行う仕組み」を指す。菅官房長官の発言は当然、揺れに揺れているGo Toキャンペーンと旅行業界を援護するためのものだった。
菅官房長官は7月27日、政府の「観光戦略実行推進会議」の席上で旅行や働き方の新しいスタイルとして、リゾート地や温泉地などで余暇を楽しみながらテレワークで仕事をする「ワーケーション」の普及に取り組む考えを示した。「ワーケーション」は「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語だ。
一方で、前日7月26日の記者会見で西村康稔経済再生担当相は、「(各企業は)後戻りせず、多様な働き方の中でテレワークの割合を維持してほしい」と述べ、テレワークを70%まで引き上げるように経済界に求める姿勢を示した。
Go Toキャンペーンのあり方についてさまざまな問題点が指摘されている中、“テレワーク”を推進する政府の“チグハグな”政策に対して、「仕事には行くなと言いながら、旅行には行けというのか」など多くの批判や疑問が寄せられている。
ところが今度は、菅官房長官の口から「ワーケーションの普及」が出たことで、ネット上は騒然となり、例えばツイッターには多くの書き込みがあった。
「ワーケーションって何だ?」という単純なものから、「旅行(Vacation)に行っても仕事をするなら、それは仕事だろう」「政府はとにかく旅行に行け、そして旅行先で仕事しろと言っている。旅行業界の策略」などの声が出ている。
この「ワーケーション」は旅行業界の雄であるJTBや日本航空(JAL)などが研究会を立ち上げ取り組んでいるテーマで、件の発言が旅行業界への“援護射撃”であることは明らか。
実際、NTTデータ経営研究所、JTB、JALは、6月19日から7月3日までワーケーションの実証実験を行っており、その結果を7月27日に発表している。7月27日は、政府の「観光戦略実行推進会議」が行われ、菅官房長官から「ワーケーション普及発言」が出たのと同日だ。菅官房長官の発言が、旅行業界への援護射撃にために行われたことの証左でもあろう。
「ワーケーション」に旅行業界は大きな期待を寄せている。例えば、2019年11月12日のJTB総合研究所のコラム「拡大するワーケーションの可能性と課題」には、「今後、ワーケーションのような「仕事」「休暇」のハイブリッド型の仕組みが一般的になれば、観光産業にとってもコペルニクス的な発想の転換で平日やオフ期の需要拡大を望める可能性が生まれ、(以下、略)」と“コペルニクス的な発想の転換”とまで書かれている。
実は、まったく注目されていないが、2020年度第1次補正予算では「国立公園等への誘客・ワーケーションの推進と収束までの間の地域の雇用の維持・確保」として30億円の予算が計上されており、この中で「国立・国定公園、温泉地でのワーケーションの推進」として6億円が充てられているのだ。
この「国立・国定公園、温泉地でのワーケーションの推進」は、第1次補正予算の中では、言わばGo Toキャンペーンと同じ位置付けにあり、経済活動回復のための施策のひとつでもある。つまり、菅官房長官が「ワーケーション」をこのタイミングで言い出したのは、計算されたものだった可能性が高い。
それにしても、「出社はせずにテレワークをしろ。だが、旅行には行け。政府がGo Toキャンペーンで宿泊代金の支援を行うのだから、旅行先でテレワークをしろ」というのは、観光業を保護するためだとは言え、あまりにも唐突で、無謀ではないか。
政府がワーケーションを推進するのであれば、その意義について丁寧に説明し、企業のワーケーションに対する理解を得た上で、従業員がワーケーションを実施できる環境を整えるべきだろう。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事