石原さとみ『アンサング・シンデレラ』の裏で勃発する“薬剤師の仕事”論争

　7月23日に放送された、石原さとみ主演のドラマ『アンサング・シンデレラ　病院薬剤師の処方箋』（フジテレビ系）の第2話の平均視聴率は9.8％（ビデオリサーチ調べ、関東地区）。初回放送から0.4ポイント下がったものの、近年視聴率低迷が続いていた木曜劇場の中では優等生的な成績だ。

 『アンサング・シンデレラ』は、荒井ママレによる漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』が原作で、病院の中でも陰日向に咲く「病院薬剤師」にスポットライトを当てた物語。医療ドラマといえば医師や看護師が主人公になることが多いことから、その珍しい設定に放送前から注目が集まっていた。

　7月16日に初回が放送されると、薬剤師の知られざる努力と、患者との感動的な物語に大反響。「こんなに泣くと思わなかった」「知らなかった、薬剤師って素敵な仕事なんだ」「薬剤師を見る目が変わる」など称賛する声が殺到し、好調なスタートを切った。

　こうして好評を得ている『アンサング・シンデレラ』だが、その裏ではある“戦い”が起きている。ドラマを視聴した薬剤師と看護師による、ネット上での論争だ。

　看護師の立場から見ると、石原演じる主人公・葵みどりが行っている業務は、ほとんどが看護師の仕事とのこと。患者の容体が急変した際にずっと側にいたり、アナムネーゼ（患者の既往歴）をとったりと、ドラマの中でみどりが行っていることは、実際は看護師が行っていることなのだという。普段自分たちが一生懸命やっていることを多職種の手柄にされてしまえば、納得がいかないのも頷ける。

　一方、薬剤師からは「薬剤師への偏見をなくしたり、理解を深めてもらったりするために放送しているのに、看護師が活躍していないことを怒られるのはおかしい」といった趣旨の声が上がっている。『アンサング・シンデレラ』の主人公は、あくまでも薬剤師。ドラマの中で看護師にスポットライトが当たらなくても、怒らないでほしいといったところだろう。

　とはいえ、『アンサング・シンデレラ』の原作漫画は薬剤師の間でリアリティがある作品として知られており、看護師からの異論が目立つこともなかった。ドラマについて「好きなシーンがカットされていた」といった声も上がっていることから、ドラマ版『アンサング・シンデレラ』は、“薬剤師の仕事の本質”を描く上で大切な描写を省いてしまっており、それが今回の論争を生んでいる原因なのかもしれない。

 『アンサング・シンデレラ』によって、薬剤師と看護師が互いをにらみ合う状況になってしまっては本末転倒である。今後の展開と視聴者の反応に注目していきたい。

■番組情報
木曜ドラマ『アンサング・シンデレラ　病院薬剤師の処方箋』
フジテレビ系／毎週木曜22:00～
出演：石原さとみ、田中圭、西野七瀬、真矢ミキ、成田凌、 桜井ユキ、井之脇海、
金澤美穂、迫田孝也、池田鉄洋、でんでん ほか
原作：荒井ママレ
脚本：黒岩勉
演出：田中亮、相沢秀幸
音楽：信澤宣明
プロデュース：野田悠介
制作著作：フジテレビ第一制作室
公式サイト：https://www.fujitv.co.jp/unsung/

早乙女りこ（ライター）

東京生まれ神奈川育ちのフリーライター。映画・ドラマはジャンル問わず幅広く鑑賞しており、物語の展開を予想したり、役者の演技を複数作品で見比べたりすることが趣味。

さおとめりこ