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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.593

陰謀論は実在するのか、それともトンデモ論か!? 衝撃の告発『誰がハマーショルドを殺したか』

秘密結社「サイマー」の恐るべき陰謀

「サイマー」の求人広告に応募して、研修に参加した白人男性。秘密結社は確かに実在した。

 調べていくうちに、「サイマー」の恐るべき実態が判明する。「サイマー」は白人至上主義団体で、外国政府からの支援で運営されていた。アフリカ各国の独立運動に協力的だった国連のハマーショルドは、白人社会にとっては目障りな存在だった。ハマーショルドが乗っていたチャーター機は、やはり傭兵によって爆撃されていたのだ。この事件に「サイマー」は深く関わっていたようだ。

 秘密結社「サイマー」の恐ろしさは、それだけではなかった。アフリカ各地に診療所が設けられ、エイズ予防ワクチンと称して、実はエイズウイルスに汚染されていたワクチンを黒人たちに接種していたというのだ。黒人をこの世から絶滅させるための生物兵器として、エイズウイルスは利用されていた。そして、この事実を公表しようとした「サイマー」の若い女性職員も不可解な死を遂げていた。

 映画の後半、「サイマー」の内情を知る男性ジョーンズが登場し、物語はいっきに佳境を迎える。顔出しでカメラの前に立つジョーンズは、「サイマー」で実際に工作員として活動していたという。「サイマー」について口にするのは危険だが、真実を打ち明けたかったと語るジョーンズ。彼の証言をもとに「サイマー」の組織内部が、アニメーション化されて描かれる。

「サイマー」の准将だと自称する白人男性キース・マクスウェルが現場を指揮し、キースは英国海軍のようにいつも白い服を着ていたという。医者だと偽り、エイズウイルスを貧民街で暮らす黒人たちに接種していたのもキースだった。

 ハマーショルドの遺体の襟元には、なぜかトランプのカードが一枚挟まれており、そのカードは「死のカード」を意味するスペードのエースだった。ジョーンズによると、それはCIAの名刺代わりなのだそうだ。なぜ、CIAは証拠になるようなトランプをわざわざ残したのか。はたして、ジョーンズの証言はどこまで信用できるのか。

 1963年のジョン・F・ケネディ米国大統領の暗殺事件以降、世界中でさまざまな陰謀論が語られるようになった。だが、陰謀論をエンターテイメントではなく、ジャーナリスティックな形でまとめることは容易ではない。黒幕についての推測は成り立つものの、具体的な物証を見つけることは困難だ。また、見つけたとしても、その物証の信憑性を証明することはさらに難しい。事件の内情を知るという関係者が名乗り出ても、どうも胡散臭い話のことが多い。陰謀論を真剣に探れば探るほど、闇が広がり、全体像がぼやけてしまう。

 迂闊に発表するとトンデモ論者扱いされ、世間の信頼を失うことになる。おそらくマッツ監督たちも、頭を抱えたに違いない。「サイマー」の存在は、あまりにも安っぽいサスペンスドラマじみていると。

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