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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.592

“リアル筋肉マン”ドンソク主演作『悪人伝』ほか…非イケメンたちが活躍する韓国映画のコク深さ

庶民のための「ユートピア」としての映画館

名脇役として知られているユ・ヘジンが主演した『マルモイ ことばあつめ』。ダメ人間役が抜群にうまい。

 その日暮らしの生活を続ける、ダメ人間のパンスだが、息子が通う学校の授業料を滞納していることから、朝鮮語学会の雑用係として働くことに。エリート教育を受けているジョンファンは、字が読めない粗野なパンスを毛嫌いしている。だが、パンスのような社会の最下層で暮らす人間こそが、生きた言葉を使っていることにジョンファンは気づかされる。パンスの協力なしでは、辞書をつくることができないほど、パンスの存在感が増していく。

 日本統治下ゆえに、ハングル辞書の編纂は禁じられていた。朝鮮語学会が密かに辞書づくりを進めていることを察知した日本兵が、朝鮮語学会へと迫る。原稿を持って逃げ出したジョンファンたちが最後の砦として立て篭るのは、パンスが働いていた映画館だった。映画館は庶民のための居場所であることを象徴的に映し出したクライマックスだ。映画館は学歴のない人間も、インテリも、そしてお尋ね者さえも、入場料さえ払えば受け入れてくれる「ユートピア」としてオム・ユナ監督は描いている。

 今年の米国アカデミー賞を席巻した、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(19)も、非イケメン俳優のソン・ガンホ主演映画だった。ソン・ガンホの中年男の哀愁とユーモラスさが漂うメタボ体型があってこそのブラックコメディだった。ポン・ジュノ監督がソン・ガンホに唯一演出として掛けた言葉は、「痩せないでください」だったそうだ。

 マ・ドンソクは1971年生まれ、ユ・ヘジンは1970年生まれ、ソン・ガンホは1967年生まれ。みんな、いいオッサンである。そんなオッサン俳優たちの全身から滲み出るコクと風味が、韓国映画を実に味わい深いものにしている。日本映画が失って久しいものではないだろうか。

『悪人伝』

監督・脚本/イ・ウォンテ 出演/マ・ドンソク、キム・ムヨル、キム・ソンギュ

配給/クロックワークス 7月17日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国劇場公開

(c) 2019 KIWI MEDIA GROUP & B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

http://klockworx-asia.com/akuninden/

『マルモイ ことばあつめ』

監督・脚本/オム・ユナ 出演/ユ・ヘジン、ユン・ゲサン

配給/インターフィルム 7月10日よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開中

(c)2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

https://marumoe.com

最終更新:2020/07/17 21:00
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