大河ドラマ『麒麟がくる』のやさしい明智像は捏造か? 戦国時代を生き抜いた銭ゲバ武将の金勘定
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金にはがめついが、人命には配慮?
比叡山が大量の煙に包まれている様子が、京都市中からも眺めることができたという同時代の証言は複数あるので、おそらくは寺院の建物を直接燃やすのではなく、用意しておいた薪を大量に燃やすなどして煙を多く発生させ、恐怖心を煽り立て、早々に降伏させる心理攻撃を明智軍は用いたのかもしれませんね。
実際には「焼き討ち」というより「攻撃」程度だったが、攻められていない比叡山は煙に包まれると大パニックにおちいり、降伏せざるを得なくなったのではないでしょうか。
当時、薪の類は相当に高価でしたし、大量に燃やせばかなりの経費がかかります。早々と降伏してくれたので、明智としてはダブルでラッキーだったということでしょう。
比叡山を攻めた織田家の武将は明智だけでなく、山の麓付近では織田信長本人がお得意の大量虐殺を実行してはいるのですが、明智らが本当に寺院を焼きまくったかというとそれは違うと考えるのが昨今の研究を反映した見解となるわけです。
しかし、寺院の建物に優しかった代わりというか、信長から近江国の支配権を与えられた明智は、領内の延暦寺以外の寺院の領地・財産をことごとく没収して回り、それを私財にしてしまうという鬼の所業を見せているのでした。
人命に対し、戦国時代としては珍しいくらいに配慮はするけれど、金は搾り取るというのが明智流というわけです。
それなら今年の大河『麒麟がくる』の、部下思いでやさしい明智像は完全に捏造か? というと、そうとも言えないんですね。
筆者がプロファイルするかぎり、史実の明智も身内には非常に優しいのです。たとえば、自領での明智は善政を敷いた「良き領主」であったといわれるし、戦で部下が亡くなると、その供養をする寺に明智は律儀に供養米をおさめた記録まで残っているのです。
しかも名字がない、つまり身分が高くない部下が亡くなった場合でも、同じように律儀に対応しているんですね。自分の城を作ってもらうために雇った工事の職人たちから25%もピンハネする鬼の顔とはまったく別といわざるを得ません。
マネーをめぐって明智のあれこれを分析していると、一筋縄では戦国時代を生きていけなかったことが明確になってきますね。
同時に織田信長と明智、ある時期までは非常にうまく(少なくとも傍目には)やっていたはずの両者の対立の理由も、実はお金がらみのトラブルに過ぎなかったのかもしれません……。この話はまた次回。
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