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政治学者・中島岳志が分析する2020都知事選【後編】

都知事選・小池当選の裏で“勝った”のは結局自民党、解散総選挙は秋? 立民凋落で維新が野党第一党に!?

左翼は「正しさ」を押し付ける

『自民党 価値とリスクのマトリクス』(スタンド・ブックス)

ーーでは今後の政局を占う上で注目のポイントはどこにあるでしょうか?

中島 まず、秋に総選挙が行われるとしても、率直に言ってリベラル側がそう簡単に政権交代できるとも思えない。政権交代するのであれば、長期政権を目指す体制が整っていなければなりません。仮に今政権交代をしても、ガタガタになってすぐに終わりとなる可能性が高いように思います。その後には、より深い絶望が待っています。10年をかけて政権を奪取した民主党ですら数年でばらばらになってしまったんだから、準備に長い時間をかけないと長期政権は望めません。

 一方で、僕は安倍政権には退陣してもらわないと困ると考えている。そのためには、「野党は強敵だ」と思わせることによって、自民党の中を動かしていく必要があります。安倍で選挙に勝つことができないという危機感が強くなれば、自民党は石破茂氏を担ぎ上げる必要に駆られるでしょう。

 かつて、石破氏はリスクを個人化し、再配分には消極的な新自由主義的な考え方の持ち主でした。しかし、安倍総理の逆張りとして、新自由主義を捨て、再配分を重視する方向に傾いています。現状では、バラバラで信頼関係を築けていない野党が政権を取るよりも、石破内閣を組閣することのほうが現実的でしょう。そのためにも野党が強くなければならない。与党に脅威を与える存在にならなければなりません。

ーーでは、今後、リベラル勢力が育つためにはどのようなことが必要でしょうか?

中島 左翼がちゃんと「政治」をすることでしょうね。

 立憲民主党の支持者もれいわ新選組の支持者も、少しの違いによって争い合い「あいつらはクソだ」と内輪もめを始めてしまう。そんなことをしているから支持を取り付けられないんです。れいわのほうはまだ新興勢力という側面がありますが、少なくとも立憲側は横綱相撲をとり、若い人に批判されたとしても「まあまあ、よくわかるよ」といさめる余裕を持つことが必要です。

 左翼には「自分が正しい」と思い込み、その正しさを他人に押し付ける悪い風習があります。その一方で、かつての保守主義者は「自分は間違うかもしれない」という前提に立ちながら、自分の能力を過信せず、論敵の言い分に耳を傾ける懐の広さを持っていました。

 左派の人々は、これまでとってきた傲慢な態度を反省したほうがいい。そうしなければ、次の選挙でも2割程度の得票率で惨敗することになると思います。

中島岳志(なかじま・たけし)

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、2017年8月から東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。05年、『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』で大佛次郎論壇賞を受賞。著書に『インドの時代』『秋葉原事件』『パール判事』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『ナショナリズムと宗教』『アジア主義』『自民党 価値とリスクのマトリクス』など。

萩原雄太(演出家・劇作家・ライター)

演出家・劇作家・フリーライター。演劇カンパニー「かもめマシーン」主宰。舞台芸術を中心に、アート、カルチャー系の記事を執筆。

Twitter:@hgwryt

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はぎわらゆうた

最終更新:2020/07/15 10:00
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