ディズニーがオタクを狙い撃ち! 特大ヒットのスマホゲーム『ツイステ』とウォルト・ディズニーの思想
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今年3月にリリースされたスマホゲーム『ディズニー ツイステッドワンダーランド』が人気を博している。
ウォルト・ディズニー社とアニプレックスが手を組み、『不思議の国のアリス』や『眠れる森の美女』など、ディズニーアニメのヴィラン(悪役)から着想を得た男性キャラクターが魔法学校に通っている……という設定の、いわゆる“イケメンゲーム”に分類できる作品だ。
キャラクターデザインを大ヒットマンガ『黒執事』の枢やな氏が手がけていることも話題になったほか、最近では同ゲームのキャラクターを表紙にしたアニメ誌「PASH!」(主婦と生活社)が即日完売、2度の重版がかかり合計2万5000部を増刷するという大反響ぶりを見せた。
ゲーム自体の魅力についての分析は他記事に譲るとして、一見あまりディズニーらしくないように見えるこのゲームの狙いについて、ビジネスという観点から掘り下げるべく、『東京ディズニーリゾートの経営戦略』『ディズニーランドの国際展開戦略』(共に三恵社)などの著書があり、テーマパーク経営に詳しい中島恵氏に話を聞いた。
ランドの売り上げでは物足りない!? ディズニー社の思惑
──『ツイステ』はキャラクターデザインからして、従来のディズニーのイメージとはだいぶ異なっているように見えます。そもそもディズニーがいわゆる“イケメンゲーム”を手がけること自体、ディズニーに詳しくない者からすると驚きがありました。ディズニービジネスの研究者としては、このゲームはどういった位置づけでとらえていらっしゃいますか?
中島恵氏(以下、中島) 何より注目すべきは、『ツイステ』の発売元がウォルト・ディズニー・ジャパンであることです。ウォルト・ディズニー・ジャパンはアメリカのウォルト・ディズニー本社の日本支社であり、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドとは資本関係がありません。『ツイステ』は、ディズニー社がオリエンタルランドを抜きにして日本市場で売上を獲得するための戦略の一環と見ていいと思います。
──アメリカのディズニー社と日本のオリエンタルランドの関係をあらためて教えてください。
中島 ディズニー社は、ディズニーのキャラクターやアニメ、映画の著作権を管理し、ロイヤリティ(著作権使用料)を得るビジネスモデルです。オリエンタルランドはその取引先のひとつであり、年間売上によって変動はありますが、毎年200億円以上をロイヤリティとしてディズニー社に支払っているんです。ただ、年間売上高約7兆円(2019年)というディズニー社の規模を考えると、オリエンタルランドからの200億円というのは物足りない数字なんですね。もっと日本市場で稼ぎたいんです。そこで自社で経営権を握れる事業を持とうと考えたときに、ゲームにたどりついたのではないでしょうか。
──ディズニーのスマホゲームといえば『LINE:ディズニーツムツム』というヒットの例があります。『ツムツム』はミッキーやミニーなど定番のキャラクターが中心だったのに対し、『ツイステ』はかなりターゲットを絞っているように見えます。
中島 明確に、女性のオタクに向けたデザインになっていますよね。『ツイステ』の運営は明言していませんが、ディズニーアニメのヴィランをベースに顔のいいキャラクターがたくさんいて……というのは、ディズニーシーで人気の“手下沼”の影響を感じます。
(※2015年より、ハロウィーンシーズンに、ヴィランズをテーマにしたショー『ザ・ヴィランズ・ワールド』の一環として、その手下たちによる小規模なショー「アトモスフィア」が行われている。従来のディズニーファンに加え、オタク女子の心もつかんで毎年人気を博し、キャラクターグリーティングは長蛇の列ができる。)
”手下沼”で、ディズニー・ヴィランズの魅力があらためて見つかったことの影響はあるでしょうね。やはりキャラの立った悪役は魅力がありますから。同時に、ビジネスとしても狙い目だとわかったのでしょう。ディズニーにとって、今やハロウィンシーズンはクリスマスを上回る一番の稼ぎ時とされています。寒い冬のクリスマスより暑くなく寒くもないハロウィンシーズン(秋)は人気なのです。
ただし、アトモスフィアはステージが小さいので、一度に観られる観客の数が少ないんですよね。しかもシーズン限定なので、“手下沼”のオタクになっても年間通うには動機が弱い。一方でゲームならば、年中関係なく収益を上げられるわけです。『ツイステ』から入った人が、その影響でハロウィンシーズンのディズニーシーに行ってみたいと思うケースも増えるでしょう。
これは面白い戦略だと思います。創業者であるウォルト・ディズニーの時代には考えられなかった戦略ではないかと。
──どういうことですか?
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