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政治学者・中島岳志が分析する2020都知事選【前編】

小池百合子はテレビ討論から逃亡で戦わずして勝利、左翼共闘失敗よりも不気味な桜井誠の17万票

小池百合子と桜井誠の共通点

小池百合子

ーー日本第一党党首で元在日特権を許さない市民の会会長の桜井誠氏についてはいかがでしょうか? 前回も都知事選に出馬していた彼は、11万票から17万票へと得票数を拡大しています。

中島 17万票というのは都議選でも当選が視野に入る数字ですよね。区議会議員なら複数区で当選者が出る規模でしょう。まず、彼らがそういうボリュームになってきていることは世の中も自覚すべきです。

ーー彼の投票数が拡大したことは、関東大震災時における朝鮮人虐殺の問題を軽視しながらも366万票を獲得した小池氏を支持するムードと一致するのでしょうか?

中島 小池支持の中でも、一部にはそのような歴史観から投票した人もいたかもしれませんが、今回の選挙ではほとんどの候補は「価値観」という軸で勝負をしていない。論点はコロナ対策を中心とした金の分配の問題であり、LGBTや歴史問題といった価値の問題についてはほとんど語られなかった。歴史観や価値観に賛同して小池氏に票を投じたのは少数派でしょう。

 その一方で、桜井氏のような候補に対する人々の支持が拡大していることと、昨今のコロナ対策には接点があります。それが、自粛警察という動き。大阪府知事・吉村洋文氏の人気が高まったのが、パチンコ店の実名公表がきっかけでしたよね。しかし、これまでパチンコ店でクラスターは発生していません。にもかかわらず、世間から攻撃の矛先が向けられているんです。これは、関東大震災時における虐殺のように、「あいつらは何だ」という、マジョリティが普段から持っていたネガティブな印象が暴力へ転化した構図に似ていると思います。

ーー小池氏も、積極的に「夜の街」における感染拡大を強調していますね。

中島 パチンコ店もホストクラブも世間が好印象を持っているとはいえない施設ですよね。それを攻撃することによってマジョリティの鬱屈に訴えかけている。吉村氏、小池氏、桜井氏らは、特定のターゲットを作り、それを攻撃することで連帯感を生み大衆を動かしているんです。

ーー今後、都政としてはどのようになっていくことが予測されますか?

中島 今回のコロナ禍でかなりお金を使ってしまったため、今後、政策の幅は限定されていくでしょう。次の波が来た時に配分する余裕があるかといえば、難しいでしょう。しかもその先には五輪が待ち受けています。

 しかし、小池氏は、都政が行き詰まっても、スケープゴートを見つけ出し「このような人がいるからこうなってしまった」という構図を作り続けていくでしょう。そうして、特定の人々に責任を負わせ、彼らを指導する立場を貫きながら自らの存在感を示す。そうやって、自身の失政を見えないようにするのではないでしょうか。

中島岳志(なかじま・たけし)

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、2017年8月から東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。05年、『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』で大佛次郎論壇賞を受賞。著書に『インドの時代』『秋葉原事件』『パール判事』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『ナショナリズムと宗教』『アジア主義』『自民党 価値とリスクのマトリクス』など。

萩原雄太(演出家・劇作家・ライター)

演出家・劇作家・フリーライター。演劇カンパニー「かもめマシーン」主宰。舞台芸術を中心に、アート、カルチャー系の記事を執筆。

Twitter:@hgwryt

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はぎわらゆうた

最終更新:2020/07/14 18:00
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