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新型コロナ「これまでの対策で感染を防ぐのは困難」 研究結果が次々を発表でニューノーマルも新局面

新型コロナ「これまでの対策で感染を防ぐのは困難」 研究結果が次々を発表でニューノーマルも新局面の画像1
(写真)Stringer / 特派員「getty images」より

 世界32カ国の239人の科学者が7月6日、「新型コロナウイルスは空気感染する可能性が高い」とする共同意見書をWHO(世界保健機関)などに提出した。これに対してWHOは7日、「新型コロナウイルスが空中に浮遊する極小の粒子で感染する可能性を示す科学的証拠が蓄積されつつある」との見解を示した。もし、新型コロナウイルスが空気感染するとなれば、感染防止対策は“大きな曲がり角”を迎えることになる。

 科学者の共同意見書は、オーストラリア・クイーンズランド工科大学のリディア・モラウスカ教授が筆頭執筆者となり、英オックスフォード大学の学術誌「臨床感染症(CID)」に掲載された。

 意見書では、「新型コロナウイルスが空気中で数十メートル移動できることが“合理的疑いの余地なく”、複数の感染事例の分析で示された」としており、「これまでの対策では感染を防ぐのは難しい」と指摘し、感染防止策の強化を訴えている。

 新型コロナウイルスについては、これまで感染者の咳やくしゃみ、あるいは(唾が飛ぶような)話し方により放出される飛沫は直径5~10マイクロメートル以上で、1~2メートル飛ぶと飛沫は落下するとされている。このため、日本では新しい生活様式でも「人との間隔は、できるだけ2メートル(最低1メートル)空ける」ことをソーシャルディスタンスとしている。

 新型コロナウイルスについては以前から、「エアロゾル」と呼ばれる霧状の微粒子となっても感染するとの指摘もあり、空気感染については議論がなされてきたが、WHOも日本政府も新型コロナウイルスの感染は、咳やくしゃみなどによる「飛沫感染」と主に口や鼻の粘膜から感染する「接触感染」によるものとしている。

 だが、意見書では、「手洗いや対人距離の確保は適切だが、感染者が空中に放出するウイルスを含む呼吸器微小飛沫(ひまつ)からの保護には不十分だ」としており、屋内では換気を良くすること、高効率エアフィルターと紫外線ランプを導入すること、建物内や公共交通機関での混雑を避けることなどを、新たな対策として推奨している。

 ところが、この意見書が出された翌日の7月7日、WHOの感染予防・対策技術チームを率いるベネデッタ・アッレグランツィ氏が「密閉空間や換気が不十分な混雑した場所では、空気感染の可能性が排除できない」との見解を示し、新型コロナウイルスが「空中に浮遊する極小の粒子で感染する可能性を示す科学的証拠が蓄積されつつある」と認めた。

 もし、新型コロナウイルスが空気感染するとなれば、感染予防策を大幅に見直す必要が出てくる。これまで、新型コロナウイルスは飛沫を経由するので、飛沫を除去するために“手洗い”が効果的な予防法と言われてきた。

 新しい生活様式でも、基本的感染対策の中で、「家に帰ったらまず手や顔を洗う」「人混みの多い場所に行った後は、できるだけすぐに着替える、シャワーを浴びる」「手洗いは30秒程度かけて水と石けんで丁寧に洗う(手指消毒薬の使用も可)」としている。

 しかし、新型コロナウイルスが空気感染するとなれば、人との会話や呼吸などでも空気中に放出され、空気中を浮遊し、感染することになる。すでに、緊急事態宣言が解除され、朝の出勤では満員電車が戻りつつあり、感染が急拡大する可能性もある。

 これまで感染対策の切り札だったマスクも、より高性能なものでなければ空気感染を防げないかも知れない。企業では高効率エアフィルターによる換気と紫外線ランプを導入が必要になるかもしれない。

 何よりも、感染防止の“三種の神器”だった「2メートルのソーシャルディスタンス」「マスク」「手洗い」だけでは足りず、新しい生活様式そのものを見直す必要があるかも知れない。

 筆者はこれまでに、3月10日の「一度陰性でもまた陽性反応が出るケースも…新型コロナウイルスが新たなステージへ」、4月13日の「中国研究チーム『回復しても抗体が少ない患者がいる』、新型コロナの“集団免疫”はどうなる?」、4月29日の「WHO『コロナ抗体確認必要』と警鐘、緊急事態は長期化の覚悟が必要」、6月29日の「コロナ『再拡大』中国研究グループ『患者から抗体減少』と発表…懸念される新常態のコロナ予防法」と新型コロナウイルス変異の可能性などを取り上げてきた。

 政府はこうした新型コロナウイルスの様々な情報に対して、きちんと説明を行い、適切な予防方法を提示することで、国民の混乱を防ぎ、感染拡大を防止していくことが重要だ。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2020/07/12 16:00
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