東京都民は何も考えていない? 都知事選で小池百合子「勝因の一番はコロナ」
#週刊誌 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
ところで、私がミネソタ州ミネアポリスでホームステイしたのは、37歳の2月、婦人倶楽部という編集部にいたときだった。
ホームステイ先で、家の主人から、「テレビを見ろ!」といわれ、慌てて見ると、当時、永田町にあったホテルニュージャパンが炎に包まれている映像が流れていた。死者33人、負傷者34人を出す大惨事だった。
家の外にある寒暖計はマイナス30度。クルマを走らせている途中、ガス欠になって凍死する人が何人も出て、日本でも大きなニュースになっていた。
ロディオ大会があるからと連れて行かれた会場は吹き曝しで、酷寒仕様の服装をしていなかった私は、途中から気を失いかけた。
だが夏は気温が30度を超える。雪原の下には湖があり、何艘ものヨットが走り、一日中水着姿で過ごすという。
ホストの中年夫婦は、亭主が電機メーカーに勤めているが業績がよくないためレイオフされていた。奥さんは教師だった。知的な人たちで、日本についての知識も豊富だった。
「ミネソタの卵売り」(1951年に暁テル子が歌ってヒットした)しか知らなかった私は、幾分古めかしい街並みと、保守的だが、落ち着いた街の人たちが好きになった。
そのミネアポリスで「Black Lives Matter」運動の発端になった警官の黒人殺しが起こった。
ジョージ・フロイド(46)が、白人警官に首を膝で押さえられ、窒息死をした。市民が携帯で撮った映像がSNSで全世界に流れ、アメリカだけではなく、多くの国で、「BLM」の運動が広がっている。
黒人を差別したと大統領碑が持ち去られ、映画『風と共に去りぬ』もそうした理由から上映禁止になった。「ジョンソン・アンド・ジョンソン」社が美白化粧品が差別的だったと、販売を中止。「ロレアル」社も自社製品から「美白」の言葉を排除したという。
行き過ぎとさえ思える今回の黒人差別に反対する運動の広がりの背景には、新型コロナウイルス感染で死亡する黒人は、白人の2倍にもなるという“事実”が大きく影響していると思う。
ピューリッツア賞を受賞した元ワシントン・ポスト出身のウェスリー・ラウリーがニューズウイーク日本版で「今こそ変わる時だ」と寄稿している。
アメリカテキサス州選出のアル・グリーン連邦下院議員は、ヒューストンで開かれたフロイドの告別式で、こう語ったという。
「今こそ連邦政府に『和解省』を設置し、黒人と白人の垣根を取り払おう」と呼びかけ、「これは義務だ。私たちの責任と義務だ。このままで終わらせてはいけない。私たちは奴隷制を乗り越え、人種隔離も乗り越えてきた。しかし、和解はしていない。そのせいで今も忌まわしい差別に苦しんでいる。今こそ和解の時だ」
ラウリーはワシントン・ポストの連中と2015年から、警官による射殺事件の取材記録をデータベース化してきた。
「それからの5年間で、私たちは警官に殺された犠牲者約5000人分(だいたい1日に3人の計算だ)の事例を記録した。それで分かった。黒人は、白人の少なくとも2倍は警官の手で命を奪われている」
殺されたフロイドと昔からの知り合いのマッゴーウェンはこういう。
「大統領を見ろ。あの狂った発言を。警察よりずっとひどい。警察は奴らの手先だ。連中はバッジを着けているから、俺たちに好き勝手ができる」
中国は7月1日から、香港に国家安全維持法を施行した。イギリス時代の香港を知っているが、自由でのびのびしていてアフタヌーンティーがおいしい小国だった。習近平はその国を土足で踏みにじろうとしている。
ロシアでは、プーチンが死ぬまで大統領を続けると憲法を改正してしまった。日本も含めて、世界中が無法化していっている。新型コロナウイルス感染で、メディアは、そのことを問うこともしない。コロナ後は、人間は生き残ったが、言論表現の自由はなくなっていた。そんな悪夢を最近、よく見る。
電通は昔「コネ電」といわれていた。コネ入社が多かったからである。安倍首相の妻の昭恵も元電通である。
持続化給付金事業を電通のトンネル会社が769億円で受注して、電通が巨額なカネを“中抜き”していた問題は、さらに広がり続けている。
給付金事業を受注した「サービスデザイン推進協議会」(サ協)の業務執行理事で元電通の平川健司は、もう1つのトンネル会社「環境共創イニシアチブ(SII)」代表の赤池学と口裏を合わせて、釈明会見を行った。
だが赤池が所長を務めているUDIの竹腰稔代表取締役CEOは、文春に複数の資料を示し、会見での平川の釈明は、平川自身の“やらせ”だったことを裏付けたのである。
それまでして平川が隠したかったのは、彼の応援者である経産省の前田審議官を守りたかったからであった。さらに、サ協とSIIは赤池に報酬を払っていないと主張していたが、裏金のようにして年に1000万円も払っていたと元電通関係者が話し、赤池もそれを認めたのである。
今や電通は広告代理店などではなく「政商」である。元博報堂の本間龍はWezzy(07.02 08:00)で電通の強味をこう書いている。
「こうした受注システム構築の基礎となるのが、役人の天下りである。しんぶん赤旗の報道によれば、2009年からの10年間で、11人の役職付き公務員と1人の特別国家公務員が電通に天下りしている。内訳は財務省、総務省、経産省、国土交通省、警察庁など幅広く、有名どころでは、元総務省事務次官で18年に電通に入社し、現在は電通グループ副社長の櫻井俊氏は、人気アイドルグループ『嵐』の櫻井翔の父親である」
本間のいうように、「民間同士の事業ならいざ知らず、国民の税金で行う事業で平然と巨額の中抜きが行われ、第三者が検証出来ない今の構造は、明らかにおかしい」のである。
先日、言論表現の自由に詳しい山田健太専修大学教授に会った。コロナ禍のなかで、メディアは取材活動まで自粛し、国民の知る権利に答えようとしていないのではないかというテーマで話し合った。
事実、都知事選もそうだったが、黒川弘務前東京高検検事長問題のその後、フジ・産経の世論調査捏造問題、コロナの専門家会議の突然の解散など、知りたいことはいくらでもあるのに、朝日新聞を見る限り、その後の詳報はほとんどない。
朝日は、7月2日の紙面で、生保の営業職員の「直接会わないと、お客様と信頼関係を築くのは難しい」という言葉を紹介している。取材も、直接相手に会わないと本音を聞き出すのは難しいはずだ。最近の紙面に活気がないのは、テレワーク取材が多いからではないか。
今週の新潮はトップで、外国特派員協会で尾見茂副座長が会見中に、西村康稔経済再生相が突然、専門家会議を廃止すると発表したことを取り上げている。
要は、感染防止に前のめりになる専門家会議に、経済回復を優先したい安倍官邸が切れたということであろう。だが、これまで、専門家会議を都合よく利用して、自らの責任を逃れてきた安倍首相や西村のほうに非があることは間違いない。
新潮は、専門家会議の12人のうち4人から話を聞いている。私などと違って学者さんや研究者たちだから、あからさまな批判はしないが、ここまで懸命に取り組んできたのに、慰労や感謝の言葉が聞かれないことに、内心穏やかではないようである。
東京大学医科学研究所公共政策研究分野の武藤香織教授はこう話す。
「危機の初動では政府よりも専門家が前に出る必要性は残るので、政府にはそうした専門家の動きを封じないようにしてほしい。また専門家の側も、政府や産業界など異なる立場の利害関係者と粘り強く交渉できないと、務まらないと思います」
東邦大学医学部微生物・感染症学講座の舘田一博教授は、
「(西村大臣には)少し配慮がなかったところはあったと思います。専門家会議主導と見られているから、政府主導に戻していきたいという思いもあるのではないでしょうか。(中略)結果、専門家会議が少し出過ぎたと思われた人もいるかもしれないし、政府にも、自分たちが考えているのとは少し違うように映ったのではないか。それが専門家会議の廃止につながったのかな、という気がします」
新潮のいうように、役割分担がうまくできなかった、安倍官邸が思うように専門家たちを使いこなせなかったということだろう。
また、オブザーバーであったにもかかわらず、何もしなければ42万人が死ぬなどと大げさに吹聴した北海道大学の西浦博教授の発言も、専門家会議にダメージを与えてしまった。東北大学大学院医学系研究科微生物分野の押谷仁教授がこういう。
「試算の公表には反対でした。日本よりはるかに人口が多いアメリカの試算でも、死者は最大20万人とされていたのに、42万人は多すぎる。(中略)あまり現実とかけ離れた数字を出すと、そんなに死者が出るなら細々とした対策など意味がないのではないかと、人々が逆に対策をあきらめる方向に動く危険性があるのです」
思い付きの小中高の一斉休校、思い付きの治療薬「アビガン」の早期承認要求など、専門家たちが呆れる暴走と、都合が悪くなれば専門家会議の皆様からの意見を聞きと、責任転嫁してきた安倍首相にほとほと愛想が尽きていたということだろう。
政府は有識者会議も設置したが、そこに、感染症にもリスク管理にも素人の山中伸弥教授を入れたことにも批判が出ているようだ。ご本人も“お飾り”だけに使われるのは本意ではないだろうが、安倍官邸が考えているのはその程度のことではないだろうか。
大本営発表で、連日100人、200人を超える感染者が出たことを騒いでいるが、死亡者はまだ1000人に届かない。感染者の数で大騒ぎすることはない。無症状の若者から感染した高齢者を重症化させないためにどうするか、その一点に絞って対策をすればいいと、私は考える。
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