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立川志らくが「選挙に行かない人」を突き放す 若者をおとしめるだけ『グッとラック!』の報道姿勢

立川志らくが「選挙に行かない人」を突き放す 若者をおとしめるだけ『グッとラック!』の報道姿勢の画像1
司会もします。立川志らく。

 7月5日、日曜日は東京都知事選挙。選挙が近づくとニュースや情報番組でゾンビのように蘇るのが「若者はどうして選挙に行かないか?」という特集だが、今回も期待にたがわずやってくれました、『グッとラック!』(TBS系)が。7月2日の同番組では『若者の選挙離れ 投票に行かない理由は?』としたコーナーで、20~30代の若い有権者がどうして選挙に行かないのか? を探る特集を放送した。18歳から30代までの街行く人たちが選挙について話す様子を見た後で、スタジオでMCの立川志らくや、出演者の田村淳や小林麻耶などがコメントをしていた。

 番組はさっそく渋谷の街に出て、若者たちの声を拾う――「今度の日曜は何の日ですか?」

「たなばたの2日前?」
「僕のバイトの休みの日」

 選挙に関心のない、若者の予想通りの声が返ってくる。それに続く質問は、『どうして選挙に行かないんでしょうか?」。すると、22歳男性がやや斜に構えた風に、「別に誰が選ばれようと、若者は苦しんで生きていかなければならないのかなって感じなんで」と回答していた。コロナで雇い止め? ブラック企業? パワハラ? と、筆者は「ハッ」としてしまったのだが、カメラは気にする様子もなく、すぐ次の若者の元へ行ってしまう。

 一連の映像が流れた後スタジオにカメラが戻って、志らくがコメント。彼は若者の苦悩を語った22歳の子も含め、若者全部をひとまとめにして、「甘えてるんですよね。かっこつけてるだけ。興味もなくて何も知らないんでしょう」と突き離した。苦しいなら自分で学んで選挙に行け、それが大人になることだ、と。

 いやいや、そうなんですかね? 続いて文字だけで紹介された26歳会社員の「日曜にわざわざ出向かないといけないのは辛い」なんてコメントもあったが、せめて「日曜に行かなくても期日前投票に行けばいいじゃん」ぐらい教えてやっても、「それ、年長者たる大人の務めじゃないですか?」と思うんだが。

 それに、選挙前にだけにこんな特集をやるんじゃなく、若者が選挙に興味が湧くような番組や特集をテレビがやってくれてもいいじゃない? 普段は若者が選挙に関心があるかどうかなんてことにはて~んで知らん顔しておきながら、いざってときにやり玉に挙げてダメ出しする……志らくの言う大人ってのは、なんだかいじわるだなと思った。

 一方、このコーナーの最後には、入社7年目、国山ハセン・アナウンサーが若者の声として「政治の話を若者同士でしてもいいのかな? という感覚がある」なんて無邪気な告白をし、都知事選立候補者の名前をパパッと見せて特集は終了した。

 国山アナの言葉は若者の声としては当たり前かもしれないが、かつては「報道のTBS」と呼ばれたキー局の入社7年目アナウンサーの口からそんな言葉を聞くと、こちらが恥ずかしくなるような、情けなさにびっくりしてしまう。アナウンス部の上司は、ちゃんと注意しといてください。

 そして、せめて各候補の若者向け選挙公約ぐらい、箇条書きでいいから紹介すればいいのに。同時間帯の『モーニングショー』では丁寧に公約の読み上げなどやっている。愚痴ってダメ出しして終わりって、せっかく特集を組んでも若者の投票率を上げようなんて気概はさらさらない。視聴率は順調なようだが、報道番組としての姿勢は低空飛行と言わざるを得ない。

 みなさん、選挙に行きましょう。

和田靜香(ライター)

1965年生まれ。静岡県出身。主に音楽と相撲のライターで貧困問題やフェミニズムにも関心が高い。著書に『スー女のみかた~相撲ってなんて面白い』(シンコーミュージック)、『音楽に恋をして♪評伝・湯川れい子』(朝日新聞出版)、『おでんの汁にウツを沈めて~44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)などがある。

わだしずか

最終更新:2020/07/04 12:00
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